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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第210話 救えた命
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ら軽く唸った。

「昌一は19歳。恭二は16歳なので、少年法による審判を受けることにはなるわけだが……何人も亡くなっている大事件だから 当然家裁から検察へ逆送されることになると思う。そこで、おそらく精神鑑定が行われるだろう。その結果次第だが……彼らの行動を見る限りでは、医療少年院へ収容となる可能性が高いと僕は思うね。……何せ、2人とも現実というものを持っていないわけだし……」
「いえ、そうじゃないと思います」

 詩乃がぽつりと呟くと、菊岡は瞬きをして、視線で先を促した。

「……お兄さんとは、あの時に会っただけで、私には判りません。……でも、恭二くんは、恭二くんにとっての現実は、ガンゲイル・オンラインの中にあったんだと思います。この世界を――」

 掲げた右手の指先を伸ばして、すぐに戻す。

「全て捨てて、GGOの中だけが真の現実と、そう決めたんだと思います。それは、単なる逃避だと……世間の人たちは思うでしょうけれど、でも……」

 恭二は、詩乃自身を襲った、命を奪おうとした人間だ。……その与えられた恐怖と絶望の大きさは計り知れない。でも、それでも 恭二を完全に憎悪しきる事など到底不可能だと詩乃は思っていたのだ。ただただ、深いやるせなさだけがあった。
 
 そして、詩乃は続けた。

「でも、ネットゲームと言うのは、エネルギーを注ぎ込むにつれて、ある時点から娯楽だけの物ではなくなると思うんです。強くなる為に、只管経験値とお金を稼ぎ続けるのは、面倒だし、辛いです。……たまに短時間、トモダチとわいわい遊ぶなら楽しいでしょうけど、恭二くんみたいに、最強を目指して毎日何時間も作業みたいなプレイを続けるのは、すごいストレスがあったと思います」
「ゲームで……ストレス? しかし、それは本末転倒というものじゃ……」

 唖然としている菊岡を見て、詩乃は頷いた。

「はい。恭二くんは文字通り転倒させたんです。この世界と……あの世界を」
「しかし……なぜ? なぜそこまでして最強を目指さなければならないんだろう……?」
「私にも……それは判りません。さっきも言いましたけど、私にとってはこの世界も、ゲームの世界も連動したものだったから……。リュウキ、キリト。あなたたちは、わかる……?」

 視線を2人へと向ける。

 和人は、椅子の背もたれに深く体をあずけて瞑目。隼人は腕を組んで考え込む。

『強く、なりたいから』

 やがて、言葉を発されたのは どちらからだろうか。一瞬だったが、詩乃には判らなかった。だけど、その言葉を、その意味をゆっくりと考えてから、頷いた。

「……うん。私もそうだった。VRMMOプレイヤーは誰しもが同じかも知れない……、ただ 強くなりたい」

 体の向きを変えて、詩乃は正面から菊岡を見
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