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ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第210話 救えた命
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、この世界。それが唯一の現実だわ。実はアミュスフィアが作った仮想世界だったとしても、私にとっては現実。……って事だと思う」

 詩乃が言い終える間もなく、隼人もぴくりと眉を動かし、和人も眼を見開いて詩乃を見ていた。

 やがて、シニカルさの欠片もない、と見える笑を唇に浮かべた。

「……そうか。そうだな」
「確かに。シノンの言うとおり、だ」

 2人ともが同感だった。自分達の方が遥かに意識をしていた筈なのに、ここに来て詩乃に改めて諭された事への脱帽もあった。

「今のシノンの言葉、ちゃんとメモっとけよ。……この事件において、唯一の価値ある真理かもしれないぜ」
「――って、からかわないで」
「……ははは」

 詩乃は肘で キリトの腕を突いて、そして 隼人はただただ、笑っていた。
 菊岡はもうケーキを食べ尽くして、空になっている皿を眺めながらゆっくりと頷いた。

「いや、本当にその通りだね。……昌一にとっては――それが全く逆だったのかな。自分のいない場所こそが現実……」
「あの男は、『まだ終わってない』と言う言葉を盛んに繰り返していたよ」
「ん。……まだアインクラッドから完全に戻っていなかった、と言う事だろう。そう考えれば、茅場の目的は、あの城が崩壊したあとにこそ、実現するものだったのかもしれない、な」

 和人や隼人の言葉を訊いて、菊岡は眉をひそめた。

「……怖いことを言うね。彼の死に方はまだまだ謎が多い。……が、今度の事件には関係ないだろう?」


――茅場晶彦。

 彼の終演とあの世界の崩壊に立ち会ったのは、この世界中見渡してもたった4人だけだ。あの場に居合わせてなければ、電子上とは言え 長らく仕事を共にしていた隼人でも 結論には至らなかったと思えるから。


 その後、菊岡は 今回の事件の被害者についてを語りだした。

 ゼクシード事、《茂村 保》。彼の死の間際の事と実際の実行犯について。そして 今大会での犠牲者について。状況から判りうる事と昌一の証言を訊いた上での結論だった。

 それを訊いていた中で、詩乃はやはり、話の中で時折出てくる《恭二》の名前を訊いて、詩乃はぴくりと肩を震わせた。

 昨日の夜。――兄、昌一から訊かされた切欠は、ゼクシードによるミスリードだと訊かされた。あの偽の情報のせいで、ステータスの分配を誤り、《最強》となり得なくなったことが。 だが、実際には極AGI型にもかかわらずあれ程強かった《闇風》の存在がその思い込みを否定しているのだが。

 恭二は現実世界ででも 詩乃に似たようないじめを受けていた。

 金を脅し取った上級生たち以上に許せなかったのだろう。

――いや、違う。……そうじゃなくて、新川くんにとっての現実はその時はもう……。


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