第13話 私が抱く貴方への思い
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」
近くにいるはずのリィンに声をかけるが反応がない、おかしいなと思って私が振り向くとリィンは部屋の隅をジッと見ていた。
「リィン、どうかしたの?」
「あ、いや……」
再び声をかけると今度は反応して私の方に振り替える、私はリィンが見ていた場所に視線を移した。そこには小さな子供の死体が倒れていた。
「さっきの魔獣にやられたのね……」
一通りこの辺りを周ってみたけど生存者は見つからなかった。私達以外は皆死んでしまったみたいね……
「……なあレン」
「なにかしら?」
「もし……もし僕がもっと早く異変に気付いていたら、この子を守れたかな?」
「リィン……それは無理よ。私達だって危うい所だったのよ。こうして生きていられるだけでも奇跡だと思うわ」
リィンの気持ちも分からなくもない、平和に暮らしていただけなのに誘拐されて実験台にされて挙句には殺される……あんまりだと思うわ。
「そうか、そうだよな…僕は無力だな……」
リィンは悲しそうな声でそう呟いた。まるで自分の中にあった大切な物を守れなかった……そんな印象を儚げに移すように。
「リィン、今はここを脱出するのが先よ。それが生き残った私達のするべきことだと思うわ。」
「……そうだね、僕達は行かないと」
リィンは死体から視線を私に移して弱弱しく微笑む。冷たい言葉だと思う、でも死んでしまった人はもう直らない。
……ねえリィン、貴方はどうして誰かを守りたいの?貴方は自分の事より他人の事ばかり優先する…私を守ってくれるっていう言葉…なんだか別の誰かに重ねて言ってるように感じるわ。
私は貴方の事が好きよ。こんな地獄のような場所で私に光をくれたのは貴方なの。だからこそ貴方を知りたい。貴方に傷ついてほしくない……でも貴方は傷ついていく。
私はずっと見ていた。周りで死んでいく子達を必死に守ろうとして守れなかった貴方を、それが叶わずに諦めてしまう自分に嫌悪する貴方を、赤の他人すら助けようとしてまた傷ついていく。
逃げたいと言っておきながら結局誰かを助けてチャンスを失ってきたのを何回も見てきた。どうしてそこまで他人を助けたいと思うのか私には分からない。
けど私は知りたい、彼を理解したい。願わくば彼の心の拠り所になりたい。でもリィンの心には私じゃない誰かがいる……女の子って男の子が思ってるより敏感なのよ。何となくだけどそれを感じたわ。
「行こうか、レン」
「……ええ」
私じゃ貴方の心は癒せないの、リィン?……ううん、いつか貴方の心を癒せるそんな存在になってみせるわ。それが私の思いだから……
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