巻ノ二十三 箱根八里その四
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「確かにここは守りとしてかなりじゃ」
「東国に入るにはな」
「ここから東国に軍で入るには難しい」
根津はその目を鋭くさせて述べた。
「それも軍が大きければ大きい程な」
「だから東国から西国への行き来は難しいのですね」
伊佐もだ、周りを見回しつつ言った。
「昔から」
「そうじゃな、甲斐から行くにしても」
望月は箱根が駄目なら、と話した。
「信濃の山と森を越えてじゃしな」
「だから東国は本朝の中にあっても独特なのじゃな」
幸村も言った、ここで。
「頭ではわかっていたが今身体でわかった」
「実際に箱根に今入り」
「そしてですな」
「殿もですか」
「おわかりになられましたか」
「うむ、この箱根は天下を分けるところじゃ」
その東国と西国を、というのだ。
「ここを越えることは容易ではない、信濃もな」
「ではです」
筧が幸村に問うた。
「まだかなり先のことですが」
「羽柴殿がじゃな」
「はい、あの方が天下を目指されるなら」
その時はというのだ。
「東国にも入られますな」
「天下統一には無論東国も入る」
「だからですな」
「当然東国にも入られるが」
これはその通りだというのだ、幸村も。
「その為にはこの箱根か信濃を越えねばならん」
「では」
「箱根を越えることは難しい、しかしな」
「それでもですか」
「越えられることは越えられる」
それは出来るというのだ。
「確かにこの道は我等でなければ進みにくい、しかしな」
「進めることはですな」
「進める」
それは可能だというのだ。
「だからじゃ」
「それで、ですか」
「進むのが難しく遅く疲れてもな」
それでもというのだ。
「人が進める場所であるのは確かじゃ」
「では、ですな」
「ここを大軍で通ることは出来る」
「では」
「うむ、羽柴殿は必ずここを通られる」
天下統一を進めるその中でというのだ。
「やがてな」
「では小田原も」
「あの城もじゃな」
「ことと次第によっては」
「そうなるであろう」
攻めることになるというのだ。
「北条殿の対応次第じゃが」
「羽柴殿に従えばよし、ですか」
「そうじゃ、しかしな」
「従われぬならば」
「ここを越えてな」
そしてというのだ。
「小田原も攻める」
「そうなりますか」
「確かに小田原は大きいという」
その小田原城はというのだ。
「しかしな」
「それでもですか」
「攻められない城はないですか」
「陥ちぬ城はない」
「そう仰るのですか」
「その通りじゃ、この世に陥ちぬ城なぞない」
断じてという言葉だった。
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