三話:契約
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ましくて心がどうしようもなくささくれ立つ。
全てが救われるという最高の結末だというのにこの苛立ちはなんであろうか。
その後も、謎の人物は『助けて』という言葉があれば飛んでいき、助け続けていった。
『ありがとう』
『ありがとう』
『ありがとう』
助ける度に言われる心からの感謝の言葉。
衛宮切嗣が一度たりとも聞くことができなかった尊い言葉。
こんな結末など不可能だろうと思いながらも心のどこかでは羨ましいと感じる。
ご都合主義でも良かった。目の前の人物のように誰かを救えればよかった。
でも、自分にはそんなことなどできない。目の前の彼のように奇跡を起こすことはできない。
そう、思っていた。
『助けて』
その声を聞いた瞬間に全身が凍り付いたかのような感覚に襲われる。
何故なら、その声はかつて助けようとして救えなかった少女の声なのだから。
夢だというのに全身の皮膚から冷たい汗が噴き出て止まらない。
恐る恐る振り返ると、少女は確かにいた―――全身を血で染め上げた状態で。
『君はさ、どうして私を助けてくれなかったの?』
「ぼ、僕には……そんなことはできなかったんだ」
『うそ。だって―――君は人を救えているじゃない』
少女の指が示す方を壊れたブリキ人形のようにゆっくりと向く。
そこには先程と同じように人を救い続ける謎の人物が―――衛宮切嗣が居た。
頭が真っ白になりその場に崩れ落ちる。そして思い出す。
自分は目の前で奇跡を目撃したことを。全ての行いを否定されたことを。
何よりも―――彼女が救えたことを。
『どうして、僕は殺されたの?』
『どうして、私は死なないといけなかったの?』
『あんなにも素敵な未来が待っていたかもしれないのに、どうして?』
少女とは別の声が聞こえてくる。
顔を上げてみるとそこには衛宮切嗣が殺してきた者達が居た。
誰一人として忘れてなどいない。必ず価値のある死にして見せると誓った者達。
だが、現実はどうであろうか。
『俺が死んだ意味はなかった』
『娘が殺される理由なんてどこにもなかった』
『僕達は一体何のために殺されたんだい?』
「あ…ああ……っ」
気づけば目の前には死体と十字架だけが立ち並ぶ大地が広がっていた。
全員が自分につけられた傷が元で死んでいる。刻まれた名前は己が殺した者達の名前。
彼が創り出してきた死の大地。
数え切れない人間の骸があれど、一つたりとも意味のあるものはない。
謝罪の言葉すら出てくることはなく、掠れた音が喉から出てくる。
『お前は私達を助けることができたんだ』
『なのに俺達を殺し続けた』
『世界の為だなんて大嘘をついて』
糾弾の声が
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