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怪我から
3部分:第三章
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第三章

「後遺症もないんだし。リハビリしてすぐに走るわ」
「それじゃあリハビリも一人でやるの?」
「一人でやるものでしょ?」
 こう母に返す。
「それも。違うの?」
「そう。だったらやってみるといいわ」
 母は俯いた顔で娘に告げた。
「それをね。あんたがそうするのなら」
「そうするわ。リハビリもね」
 この時はそのつもりだった。早くギプスが取れて欲しいと思いそれが待ち遠しかった。そうしてやっとギプスが取れ。リハビリに入ったその時だった。
「実生ちゃん宜しくね」
 二十代前半と呼ばれる若い看護士が実生の前に来て微笑んで言ってきた。黒い髪をショートヘアにしていて明るい顔をしている。背はあまり高くはないがかなり大人びた印象も受ける。はっきりと美人とわかる顔立ちの看護士であった。左目の下の二つのほくろが印象的だ。
「蘭流っていうの。宜しくね」
「蘭流さん?」
「そうよ。伊藤蘭流」
 これがこの看護士の名前だった。
「これから貴女のリハビリのお手伝いをさせてもらうわ」
「そんなの必要ありません」
 実生はここでもいつものままだった。
「全然。一人でできます」
「実生、それは」
 母が彼女の横で顔を曇らせて言う。
「そんなこと言ったら」
「いえ、構いませんよ」
 しかし蘭流はにこりと笑って応えるだけだった。
「実生お一人でできるのなら」
「いいんですか?」
「リハビリはまず本人のやる気です」
 そしてこう言うのだった。
「ですからそれがないとどうしようもありません」
「ですけれど」
 それでも娘の態度に言わずにはいられなかったのだ。
「今の娘の態度は」
「いいです。全然」
 しかし蘭流はそれもいいというのだった。
「それよりも実生ちゃん、リハビリだけれど」
「早速はじめるんですか?」
「毎日少しずつよ」
 こう話すのだった。
「少しずつやっていきましょう。いいわね」
「少しずつどころかずっとやっていきたいわ」
 これが実生の考えだった。
「もうね。身体がなまって仕方なかったし」
「実生ちゃんってずっと陸上部だったのよね」
「はい」
 蘭流の言葉に無愛想に応える。
「そうですけれど」
「そうなの。私もそうだったのよ」
 そして蘭流もそうだというのである。
「学生時代はね」
「そうだったんですか」
「短距離の選手だったの」
 自分のことを話すのだった。
「その時代はね。これでも結構速かったのよ」
「そうなんですか」
 それを聞いても特に何も思わない実生だった。
「私は長距離ですけれど」
「実生ちゃんはそうなのね」
「それに新記録出したこともあります」
 このことも話すのだった。尋ねられるよりも前に。
「それも何度も」
「だから実生」
 そんな不
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