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東方乖離譚 ─『The infinity Eden』─
第2章・幕間:いつか其処へと至るため
episode5:私だけの魔法
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し出力は落ちるが、それでもかなりの強さだ。流石は幻想郷最速。

「せぇ……のっ!」

 足に魔力を回し、思いっきり宙を蹴る。同時に爆発的な推進力が生まれ、能力によって擬似的に生まれた漆黒の翼がその羽根を散らす。一気に上空まで到達すると、一歩遅れて上空までやってきた魔理沙が、紅魔館の方角を示した。

 魔理沙の指示に従って暫く飛翔していると、次第に霧が視界を覆っていく。勿論紅霧異変のような大層な霧ではなく、紅魔館付近に存在する湖から発せられる霧だ。自然現象によって発生する、何の変哲も無い霧。

「おっと」

 不意に魔理沙が急停止する。と思うとそのまま横に旋回し、思い出したように、そしてすまなさそうにこちらに手を合わせてきた。まるで『悪い、忘れてた』とでも言うように──

 ……あれ?そういやいつも魔理沙が紅魔館に入る手段って不法侵入じゃね?

「ふんっ!」

「どわっ!?」

 ヒュゴァッ!という何やら物騒な音に、半ば本能的に頭を守る。同時に頭を守る両腕に重い衝撃が伝わり、抵抗する間も無く地面に叩き落とされた。
 衝撃を殺しきれず、幾らか回転しながら少しずつスピードを落としていく。なんとか停止したのを確認し、立ち上がると、目の前に立っていたのは──

 まあ、そりゃ門番だわな。

「見ない顔ですね。正面から堂々と紅魔館に踏み入ろうとは、中々に肝が据わっている」

 ──違うんや美鈴、不法侵入するつもりや無かったんや……

 紅美鈴(ホン メイリン)。紅魔館の門番を務める妖怪。妖怪の身でありながら弱きを覆す為の人間の武術を会得した、妖怪の異端とも言える妖怪。

 その門番が、今思いっきり私に敵意を向けている──!

「なんでさ……」

 思わず某人間のフリをしたロボットの口癖が出るくらいには、面倒臭い状況だった。
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