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コインの知らせ
1部分:第一章
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感じである。どうやら二人共かなり異伝は上手くいったらしい。それを考えれば実に運がいいと言える。
「せめて告白されたとかだったらな」
「まあそれはね」
 ここで言葉が少し微妙になる。
「何ていうかね」
「何かあったの?やっぱり」
「いや、だから何もないんだよ」
 妹に言われてもそれを否定する卓也だった。それどころか話を誤魔化す為か逆に彼女に対して話を振るのだった。
「それより未菜」
「何?」
「御前最近帰るの遅くないか?」
「部活だからね」6
 妹の未菜は普通の顔でハンバーグを食べながら言葉を返した。
「最近練習が厳しいのよ」
「そうだったのか」
「今度練習試合なのよ」
 なお彼女は女子テニス部である。そこでエースなのだ。兄妹揃って抜群の運動神経を誇っていると言われている。
「それで練習がハードになってるの」
「ふうん」
「それ前言ったと思うけれど」
 逆に妹から反撃を受けてしまった。
「憶えてないの?」
「ああ、御免。忘れてた」
「しっかりしてよ。まあ何もなにんだったらいいわ」
 未菜もそれで納得するのだった。これで話は一旦終わった。
「おかわりは?」
「もう一杯」
 卓也も未菜も丼を出す。見れば二人共本当によく食べる。育ち盛りにしてもその量はかなりのものであった。電子ジャーも殆ど商業用の大きさである。
「それ食べて力つけないとな」
「お兄ちゃん、それはあたしの台詞よ」
 未菜が顔を顰めさせて言葉を返す。
「気をつけてよ」
「俺もなんだよ」
「俺も?」
「ああ、そうなんだよ」
「一体何なのよ」
 それがはっきりしないまま夕食を食べていく。夕食を食べ終えた卓也はすぐに自分の部屋に帰ってまた考える。しかし暫く考えるうちに意を決した顔で呟くのだった。
「こうなったらあれだな」
 そう言って机の引き出しから出したのは一枚のコインだった。十円玉である。
 それを上に投げる。キラキラと輝いて回転しながら上から下に落ちていくコインを見ながらまた呟く。
「表なら。裏なら」
 それで決めるつもりだった。今そのコインが机の上に落ちた。
「表か!?それとも裏か」
 それが問題だった。果たしてどちらか。

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