第6章 流されて異界
第131話 太極より……
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していたから。更に言うと時間的な制約もあった。
後腐れなくさっさと殺して仕舞っても良い。昨夜のあの犬神使いの様に宝石に封じても良い。
すべての判断は、オマエの友人である俺に一任された。
世界の運命と共に……。
その為に水晶宮が他の神族。特に日本を霊的な意味で支配している天津神と、世界を支配しているヘブライ神族に払った対価がどれほどの物になったのか、俺は聞いてはいない。
そして、俺自身が背負わされた対価に関しても。
「もっとも、俺が選んだのはまったく違う選択肢やったけどな」
先に挙げたふたつは、俺に取って容認出来る方法ではなかったから。
勝手に話を進めて行く俺。しかし――
「そもそも、あんたや昨夜の妙なヤツと違って、あたしにはそんな摩訶不思議な能力なんてないわよ」
そんな能力があるのなら――
自分に能力がない事を悔やむ者の台詞。普段の彼女からは考えられない声音。
……普段はどんなに強気な振りをしていたとしても、本当は自分の事を普通の人間だと考えている彼女なら、これは仕方がないか。
「今夜、俺と一緒に行ける――いや、これから先は誰も危険な目に遭わせる必要もなくなる、か?」
誰だってそう考える。俺にもっと力が有れば。もっと頭が良ければ……。
俺が能力に目覚めた最初もそんな感情からだった。但し、俺の場合は死の半歩手前。倒れた俺を見下ろす地獄の獄卒たちと、その背後に存在した墨染の衣。
都合六つの敵対的な瞳に囲まれた状態だったのですが。
「そもそもオマエが今日一日、妙に不機嫌だった理由は、この辺りが原因なんやろうが」
俺の感覚から言うのなら、何故か遙か昔の記憶。しかし、実際にはたった四年前。十三歳の頃の思い出。其の頃の俺と、そして今のハルヒ。その類似点と差異に対して皮肉な……口角にのみ浮かべる笑みを発して仕舞う俺。
この辺りが、俺が精神的に成熟していない証。未だ成長過程で、性格の悪い策士としては二流以下と言う事になる、と思う。
故に、その表情の効果を百パーセント生かす為、
「矢張りオマエは俺の言う事を何も聞いていない。俺はあの犬神使いをどう呼んでいた?」
軽く首を振り、やれやれ、……と言う感情を表に出しながら、言葉を続けた。
「もしかすると日本の自衛隊全員を相手にしても勝てるかも知れない相手を、魔法に関しては完全に素人だ……と、こき下ろして居なかったか?」
珍しく俺の方が上目使いになりながら、ハルヒに対して話し続ける俺。もっとも、この際の上目使いは、有希やタバサが行う時のソレと効果が違い過ぎるが。
少なくとも俺の上目使いは思わず抱きしめたくなる物ではない。
「確かに、あいつの体術や驚異的な回復力は凄いと思う
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