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乱世の確率事象改変
異端が与える理不尽
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ろ……ぐぅ……かはっ」
「間違うなよ徐晃隊。俺達は確かにこいつとの賭けに勝ったが、好き勝手に益州を蹂躙していいなんて権利を得たわけじゃない。
 俺達は天下統一の邪魔をするこいつらを従わせる為に、こいつらの大切なもんを傷つけるんだ。こいつらにとっちゃぁただの侵略者で、大義も正義もありゃしねぇ。そんなもんを求める心は今の内に捨てちまえ」

 ぐるりと焔耶の首を掴んだまま回った彼は、兵士達の顔を覗き込む。俺に反抗したいならするがいい。俺を止めたいなら止めるがいい。
 伝えているのは……“俺達が作る世界を信じられないのなら俺を殺せ”。
 抗う機会は敵味方の別なく与える、黒麒麟と同じように。

 しかし誰一人として、彼に向かうモノは居なかった。
 迷いもあろう、疑問もあろう、彼がこれから行う理不尽を思えば、優しい誰かは止めようとするかもしれない。
 それでも、兵士達は知っている。彼が行うことは悪辣に見えようとも、必ずその先に誰かを幸せにするモノだと。
 ヒトゴロシを生業にしている以上、必要な犠牲というモノを兵士達は理解しているのだから。兵士達こそがその最たるモノ。自分達が命を賭けているのは、覇王と黒き大徳が紡ぐ天下泰平の世の為なのだ。
 犠牲になるものが他の国の民であろうと、作られる平穏は変わらない。

「分かってるなら結構。んじゃ、こいつを処理するか」
「かはっ、っ……ケホ……っ……」

 焔耶の武器を後方に蹴り飛ばした彼は、漸く彼女を解放した。
 喉を通る空気を咳き込みながらも取り込み、それでも焔耶は秋斗を睨んだまま。
 面白い、と口を引き裂く黒は……悪辣に過ぎた。

「なぁ、魏延。お前を此処で殺したら……人間の命がどれだけ救われると思う?」
「な、にを……」
「優秀な将、特にお前みたいな武将と呼ばれるモノが一人いないだけで、軍ってのの力は一気に下がる。兵士達が集うべき旗が一本足りないだけで、覇王率いる魏軍の勝利確率は揺るがないモノになっていく。
 言うなれば……此処でお前を殺しておけば、俺の愛しいバカ共の誰かはお前に殺されることもなくなり、一人でも多くの人間を救えるってこった」

 異端者は語る。
 異なる視点から物事を見やる彼の思考は、考え込めば思い付けるモノではあるが、即座に思い浮かぶモノは少ない。
 徐晃隊の兵士達は、悪のはずなのに正論に聴こえる語り方をする彼の背に、黒麒麟の姿を幻視する。

「そんな、ことは……」
「言い換えようか。
 お前が戦わなければ……そして劉備が抗わなければ、覇王に大人しく従ってしまえば、人は死なないんだよ。
 戦わないという選択を一つするだけで、お前らは大嫌いなヒトゴロシをしなくて済むし、民の平穏は守られる。
 お前の大好きな劉備様は、他人を信じ、自分も信じて貰
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