異端が与える理不尽
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らだろう。
幾重の攻撃を避けながらも冷めきった目で焔耶の攻撃を見切り続けられるのは。
だからなのだ。
この世界の武将に勝っただの負けただのに拘らずに、常に乱世の終焉の為にと策を考え続けられるのは。
仮初めの武力には感謝している。同時に心底から嫌っている。
世界を変える力、一人でも多くの命を救えることに感謝を。
世界の全てに嘘を付かなければならない自身に嫌悪を。
才能も努力も嘲笑う自分の存在だけが、彼の憎む唯一のモノ。
黒麒麟であっても、道化師であっても、秋斗という人間を壊すに足りた。
故に彼は狂気を宿す。矛盾の果てに追い求めるのは遥か遠き理想の世界のみ。
大切な大切なこの世界を平穏に導けるというのなら、彼は最も理不尽な、天の操り人形になろうと決めていた。
一重。ただ一重の交差でその勝負の勝敗は決した。
武器を合わせることは無かった。避けることも、数合だけ見ればそれ以上は必要なかった。
彼が嫌う、あの腹黒に与えられた力は、部隊長との戦いで見極めた焔耶の武力を超えていたのだから。
「……っ……かはっ……ぁ……ぅぁ……」
交差の瞬間に懐に潜り込み、彼は焔耶の首にその大きな掌を持って行き、彼女をそのまま持ち上げた。
呼吸を紡ぐことさえ許さない。このまま持ち上げているだけで彼女は死に行くだろう。
誰も言葉を発せなかった。
確たる実力差を見せつけられて、徐公明という武将の力量を理解して。
猪々子と桔梗でさえ、呆けたままで口を開いていた。
「……苦しいかよ?」
「ぁ……くぁ……」
「分かり易く俺がお前を殺せる状況にしてやった。これで理解出来ただろ? お前は俺に勝てないし、俺達に負けたんだ」
「は……なせ……」
「……」
苦しみながらも紡がれた言葉。バタバタと足掻く脚が彼の身体に入るも、なんら気にしていないとばかりに片目だけを細めた彼は、悪辣な笑みを浮かべ始める。
「やなこった。理解しろ、脳髄に刻め、運命を受け入れて絶望するがいい。お前の命は俺の掌の中、俺の気まぐれだけで救われてるってな」
尚も睨みつけてくるその目を覗き込んで、彼は声を出して笑った。
「ははっ……瞳に憎しみが滲んでるぞ? 俺が憎いか? 憎いだろうなぁ。なんせ、お前の故郷である益州を乱世に引き摺り込む大敵だっ」
芝居がかった彼の声は、その場に居る誰しもに現実を突き付ける。
自分が何をしようとしているか、徐晃隊達に教えてやろうと。
「生まれたばかりの赤ん坊も、ずっと街で暮らしてきた年寄りも、明日祝言を上げる恋人も、仲良く街を駆ける子供達も……そして俺がつい先日助けた小さな少女だって……戦火広がる大地で眠る事になるかもしれねぇ!」
「や、め
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