異端が与える理不尽
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めてたまるかってなるよな。
うん……分かった。じゃあこっちも全力で……お前を敗北させてやるとしようか」
部隊長と同じ構え。否……本来あるべきはずの黒麒麟の角が其処に輝けば、同じとはとても言えない。
白くて長いその剣は、人々が謳った英雄の証でありながら、平穏を作るために平穏を切り裂く、矛盾の刃。
長く長く、二人は見つめ合っていた。
風の音だけが寂しげに鳴くその場で、殺気を放っているのは焔耶だけ。
何処か余裕のある表情をした彼は、いつもの通りにただ不敵。
ゴクリと生唾を呑み込んだ兵士の一人が、手にした槍を取りこぼす。
カラン……渇いた音が場に響くと同時に……共に必殺の間合いの中、二人は同時に動き出した。
†
かくも世の中とは理不尽なモノである。
才能の華持つもの達は凡人の努力を一寸で追い抜いてしまう。
人の平等など初めから無いと秋斗はいつでも考えていた。個体として生きている以上は、誰もを平等という枠に居れようとした時点で綻びが生じてしまう。
才能を持つモノ達は評価されたい。凡人達でもそれは同じこと。争いを起こさないとは、評価されたいと願う人々を満足させ続けるという無理難題を永久に続けていくことに等しい。
もしくは、才能を持つものを諦めさせ、評価を下さずにその才を分け与えろというに等しい。
前者の……欲望を満たし続けるという方法は、人の欲望の底深さ故に埋まるモノでは無く。
後者の……無償で愛を届けるその精神は、人が誰しも持てるモノでは無いのだ。
人が人であるが故に、争いはなくなることはない。
小さな喧嘩であれ、大きな戦争であれ、争いは世界中で起こる人の業であり……進歩の可能性。
僅かに話をずらそう。
一番の理不尽が何かを知っているからこそ、彼は凡人も才あるモノも全てを慈しむようになったと言っても過言ではない。
“究極の理不尽”とは、才の如何に関わらず、その命の華を摘みとること。
死こそが、才能による蹂躙などより醜悪な理不尽、そう彼は考える。
可能性さえ与えない選択。死とは、そのモノの全てを奪う行為であろう。人の持つ過去も現在も未来も、相違なく奪い尽くすのだ。
故に彼は、死を厭う。死を厭うからこそ、死を与え、その死を以って、多くの生を繋ぎ止める。
機械的な計算だけで繰りぬかれたモノに非ず、感情を殺し、狂気さえ呼び込み、選別された少数に理不尽を与え、より多くの人々に己の思い描く平穏を与える事を選んだ。
同時に、想いを繋ぎ続ける彼は、死を絶対の終わりとせず、生きるモノの為の糧と為す。
生物が他の命を喰らいて生き延びるように、彼は死者の想いを糧として死の恐れを薙ぎ払わせ、死を享受させつつ
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