異端が与える理不尽
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いうモノは、双方の納得があって初めて成り立つモノである。
「……桔梗様」
何も言えない幾分の刻。少し過ぎてから焔耶がぽつりと名を呼ぶ。
焔耶の目の向く先は黒のみ。ナニカを守るモノの目で、彼を睨み続けていた。
「わがままな弟子で申し訳ありません。しかし……己が納得するまでぶつかるのが私の性分で誇りです。この在り方を無くしてしまったら、私は私で無くなってしまいます。
どうか、お許しください」
一歩、重い一歩が踏みしめられる。
間合いの内に入った焔耶は腰を落とした。
――そんな所は似なくともよかろうに。
納得するまで、というのは桔梗も同じ。咎めることは出来ないと悟り、桔梗は大きなため息を吐いた。
「……すまんな、勝手にお主の負けと認めて」
「いえ、いいんです。私は……」
詫びたのは彼女の誇りを傷つけた為。
返される声は何処か不思議な音色。すっきりとしたような、冷めたような。
続きの言の葉は綴られない。不思議に思った桔梗が尋ねようとしても、弟子の背中が何もいうなと無言で語る。
「……言い訳はしない。責めることももうしない。お前達が勝ったと思ってるならそれでいい。私は負けていないと思っているからそれでいい」
吐き捨てるように綴られた言の葉。何か大きな決心をしたかのような彼女の瞳を覗きこんで、彼は僅かに眉を顰めた。
「だけど……私はお前が許せない。私の生まれ育ったこの大地を脅かそうとするお前を、許すことは出来ない。
私を侮辱されたことよりも……お前が愛する大地に乱世を広げようとしていることだけは、絶対に許せないっ」
だから止めると、彼女は目で伝える。
戦う理由は自身の誇りの為だけでは無い、と。
桔梗は僅かに笑った。
――儂は弟子を過小評価していたらしい。
自身の為に怒っているのだと思っていた。
しかしその実、彼女の怒りの矛先は始めから違った。
裏切りも辞さないと言った桔梗に衝撃を受けながらも、焔耶は“今ある幸せ”を守ろうとしていたのだ。
師と相対するやもしれぬと知った。それでも彼女は、桔梗とは別の遣り方で益州を背負って戦おうとしていたのだ。
桔梗は劉璋が頭である益州を守りたい。焔耶は桃香が頭となる益州を守りたい。
差異はあれど、愛する大地を守りたい心は変わらない。
その心を、如何して止められようか。
愛弟子を見つめる瞳を閉じて、彼女は一歩下がった。
――いいじゃろ。お主の選択を見届けることにしよう。
結果如何に関わらず、彼女の意思を尊重出来るように、と。
「……いいな、そういうの」
羨ましいというように笑った彼は、抜き放った長剣を静かに構えた。
「そりゃぁ認められないよな。認
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