異端が与える理不尽
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いのも一つ。掌の上で転がされていると分かっていても、桔梗はこれから行われようとしている一騎打ちを止めなければならない。
「儂が認めただけでは満足出来んのか?」
「此れは本人が認めない限り終わらない戦いだ。何度でも抗わせてなんざやらないねぇ。次の一回で叩き潰し、俺達の勝利を心に刻みつけてやる」
聞く耳は持たない。持つはずが無い。
乱世の理を以ってしての論舌を、桔梗が理解していると判断してのこと。
「……其処まで言うなら儂と戦え。弟子の尻拭いをするのも師の役目よ。それに勝者がこちらじゃと思うておる焔耶の言い分ならば、お主は約を守らねばならんとは思わんか?」
やはりそう来るか、と秋斗は心の中で呟いた。
――勝者が双方だと思っているのだから落としどころとしては有り得てもいい……けど……それだけは許さんよ。
積んだ思考の末、ぐちゃりと、彼の心の中で何かが渦巻いた。細めた瞳に一つの感情が燃える。
その言い分が何を意味しているか、真に理解しているのは秋斗だけだ。
ドロドロとタールのように粘りつく、彼の胸の内に現れた感情の名は……怒りだった。
「厳顔、お前はさっきの勝負を“無かった事”にしたいのか?」
熱溢れる部隊長の想いを、命を賭けて戦った男の意地を、生き様を……やり直しという名目で台無しにする行為。
戦うのは焔耶でなければならない。桔梗が戦うことはもはや、部隊長と焔耶の勝負とは何も関係の無い一戦を行うに等しい。
「っ……それは――」
「理解したな? ならこれ以上お前がしゃしゃり出て来るんじゃねぇ。傍観を決め込んだ時点でお前に戦う資格は無い。賭けに乗ったのはそこに居る魏延で、敗北を認めていないのも魏延本人。責を背負うのも意思を貫き通すのも本人であるべきだ。
それに……さっきの話を持ち出してもいいのなら、俺は俺よりも実力の劣る部下に全てを任せたんだが? 同じように弟子に許可したお前が、本人の意思に関係なく出てくるのは筋違いも甚だしい。魏延は俺との戦いを望み、俺はその約束を果たすだけ。そして“勝利したと思ってる俺達は、約束通りにこの益州に乱世を引き込む”。こっから先は魏延の意地と誇りの為だけの戦いで、お前の言い分なんざ穴だらけだってことに気付け」
甘い言論は全て封殺する。
風や稟、朔夜や詠、雛里や華琳……意識を取り戻してから自身よりも頭の良いモノ達と論舌を交わし続けてきた彼にとって、桔梗を弁舌で封じ込めることは容易であった。
曹操軍の聡明な軍師達と同レベルの相手でなければ、彼を理路整然と打ち負かすことは出来ない。
ぐ、と言葉に詰まった桔梗は苦虫を噛み潰したように顔を歪める。
これ以上は何を言っても無駄。わがままでしかない。勝手に戦っても意味が無い。試合や一騎打ちと
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