異端が与える理不尽
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て遣り切ってみせるさ。じゃあな、今はおやすみ……第四部隊長殿」
敬意を持って言葉を刻み、彼はぐるりと回りを見渡す。コクリと頷いたのは数人の兵士達。馬の扱いに長けた三人が、部隊長の元に近付いて行く。
そんな彼らに対して、秋斗が懐から取り出したるは一枚の紙切れ。それは“何も書かれていない紙切れ”だった。
「……本城に戻り部隊長を療養させてやれ。益州からの連絡を提出後、そのまま覇王の指示に従うべし。行け」
疾く、彼らは行動に移った。訳が分からずとも、内容が分からずとも、黒麒麟でなくとも、今の徐公明の指令なら従ってもいいと思えたから。
三人が部隊長を優しく運んで行った後、残ったのは静寂の空間。
焔耶も桔梗も言葉を発さず、秋斗もだんまりを決め込んで何もしようとしない。
幾分、俯いたままの焔耶を見つめる彼の視線は鋭く尖り、呆れたようなため息を吐き出した。
「認められないか、魏延?」
「……」
「自身の敗北を師が結論付けたとしても、お前自身が認められないかと聞いてるんだ」
「……」
沈黙が答え。否定することも肯定することも出来ず、焔耶はぎゅうと拳を握りしめるのみであった。
クセになってしまっているため息を吐き出して、秋斗は彼女の間合いギリギリまで近付いて行った。
「お前が認められないってんなら、俺は俺の矜持に基づいて一つだけ提案してやろう」
もう不敵に笑わず、秋斗は無表情で焔耶を見つめていた。
ピクリと、彼女の身体が揺れ動く。
「敗北を認めずに抗い続けるのはある種で俺達と同じ選択だ。だから、俺は俺の遣り方を貫かせて貰う」
彼を睨み上げる目には怒りを宿していた。嫌う奴らと同じだと言われて激情の念が膨れ上がる。
焔耶がギシリと歯を噛みならす。
深く昏い感情を意にも返さず、彼はすっと目を細めて剣を抜く。
「掛かって来い。お前が納得する敗北を、俺の手で刻み付けてやる。
俺らは勝ったと思ってた。お前も勝ったと思ってた。そう落ち着けて理解せずに認められないならお前が望んだ通りに戦ってやるよ。一戦の後で不利だなんて言い訳は聞いてやらない。武器の不利も力量の不足も理解した上で部隊長と戦っていたお前に、それを言う権利なんざないんだから」
逆転した立場の一騎打ち。
焔耶が敗北を認めないならと……部隊長と焔耶の立場を入れ替えて自分が戦場に立つと言っている。
力量が足りないことも体力面での不利も認めた上で、お前は部隊長のように自分が勝ったと言える勝負が出来るのか、つまりはそういうこと。
彼は黒が作り上げる舞台上に、焔耶を引き摺り込んだ。
「待て、黒麒麟」
しかし他の一人が黙っていられるはずもない。
静観を決め込んでこれ以上の失態を晒すわけにもいかな
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