異端が与える理不尽
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よう。あやつは将ではなくただの武人として試合をしてしまった。特に救いが無いのは、命を助けてやると優越を持って部隊長の誇りを穢したばかりか、武器が違えば殺されていた攻撃を受け……戦場ではないという言い訳によって自身の敗北を誤魔化した。劉備殿の代わりというからには軍としての意識を持たねばならんというのに。
その点で言えば、徐晃隊の部隊長は軍の代表として一騎打ちを行い、圧倒的不利にも関わらずに、敵将を殺さずに使者であるお主らの対面を守りつつ勝利を収めたと言えよう。
勝者が誰かなど、もはや語るに及ばんが言っておく」
小さく首を振った。僅かの期待を向けて焔耶だけに戦わせてしまった自身にも責がある、と。
せめて、焔耶の代わりに敗北を認め、師として共に責任を被ることだけが、桔梗に残された一手であった。
「部隊長の勝利であり、徐晃隊の勝利であり……お主の勝ちじゃ、黒麒麟」
ぽつりと、結果が零される。
瞬間、弾けんばかりの雄叫びが場に溢れかえった。
敵の敗北宣言が為されたのだ。曖昧で不明瞭な決着ではなく、確かに……確かに敵将は負けたと言った。
どれほど望んだことだろう。どれほど願ったことだろう。
いつもいつでも彼らが望んでいた一欠けらの勝利が、ようやっと為されたのだ。
この世界に愛されている戦乙女を、凡人である自身達の手で敗北させることが出来たなら……
願いの成就は彼らの心に希望を与えた。
徐晃隊となって日の浅い元文醜隊の兵士達ですら震え、胸に湧き上がる熱いナニカの命じるままに歓喜を叫んだ。
一人、俯いたままで拳を握りふるふると震えている焔耶に興味を向けず、彼は倒れ伏している部隊長の元へ歩み寄る。
膝を付き、優しい優しい微笑みを向けて、思うがままを口にした。
「お前の勝ちだ部隊長。今はゆっくり休め。例えこの先、お前が共に戦えなくなろうとも……お前の存在証明は此処に居る奴等が心に刻んだぞ。
お前は間違いなく“徐晃隊の最精鋭”……黒麒麟の身体だよ」
ぎゅっと無事な左手を握りしめた。熱い掌から想いが伝わる。
憧れを持った黒の道化師と、黒麒麟の身体の絆が結ばれる。どちらもの願いはやはり……“そうあれかし”。
「部隊長、お前の益州での戦いは此処までだ。後は俺に任せて来るべき時まで休むといい、バカ共と一緒に黒麒麟となる為に」
「……ありがとよ。しっかし当たり前だろ? 戻った時、片腕が使えなくなっても戦場に立つっての。まあ、今回はあんたと皆に任せるぜ。少し……疲れた……」
ニッと歯を見せて男らしく笑った部隊長は、ゆっくりと瞳を閉じた。
疲れ果てて眠る彼の寝顔を見ながら、秋斗は静かに首を振る。
「礼を言うのはこっちだバカ野郎が。お前さんが遣り切ったんだ、俺だっ
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