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乱世の確率事象改変
異端が与える理不尽
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んだって……ボクはあんた達が傷ついたら哀しいって、知ってて欲しい……」

 はらりと零れた一滴。そっと手をやった彼は涙を指先の乗せる。
 意地を張っているモノがいるのなら、引き止めたいのを我慢して待つことを選ぶモノも居る。
 戦場に向かう夫の背を見送る妻達は、きっとこんな気持ちなのだろうと詠は思う。
 だから伝えた。
 無茶ばかりに気を取られて、自分達のような“待つモノ”の想いをいつか忘れてしまいそうで。
 一人でも多くに生き残って欲しいが故に、仲良くなってしまった彼女は彼らに怒る。

 そうして、人を外れた狂信を持つ黒麒麟の身体は、大切なモノの想いを知ることが出来るから。
 そうして、人を外れた黒の道化師は、自分が切り捨てるモノ達その家族に、向けられる感情を知ることが出来るから。

 我と意地を通すのなら傷つく人が居る。敵だけではなく、味方であっても。

「……部隊長には、なんて?」
「陣を出る前に退き止めて叩き起こして怒ってやったわよ……そしたらあいつも送りの兵士達も……ありがとって言ってきた。ホント……バカばっか」

 グイと涙を袖で拭って、彼女は呆れたようにため息を吐いた。

 止めても聞かない男達と共に在るのは、心が痛んでばかりだ。
 それでも彼女は彼らと共に戦いたい。想いを繋いでいこうと決めた。
 三人の少女達は、それぞれに違う在り方で彼らと共に過ごしてきた。

 雛里は彼らと想いを解け合わせて戦える。月は淡い想いやりで導いて心を掬える。では詠は……如何か。

 彼らを叱ることは、彼女にしか出来ない。
 叱ってくれることがどれほど有り難いことか、どれほど心が救われることか。

 彼女だけの遣り方で、詠は絆と想いを繋いで行く。
 苦しくて、哀しくて、つらくて……だからこそ感情をぶつけて、詠は彼らを救うのだ。

「叱ってくれてありがと」
「……うっさい、ばか」
「ごめんな、教えないで」
「どうせ、ボクに誰かが傷つく所を見せたくないから、とかそんな理由でしょ」
「……敵わねぇなぁ」
「あんたはいっつもそう。いいわよ……除け者にした罰さえ受けてくれたら」
「罰ってなんだ?」
「それはね……」

 機嫌を直した彼女は、意地悪い笑みを秋斗に向ける。
 嫌な予感がする、と彼は頬をひくつかせた。

「猪々子とボクと一緒に寝なさい」
「却下だ!」
「罰だって言ってるでしょ? それとも、許昌から持ってきた“どらむかん式ごえもん風呂”で一緒に湯浴みでもさせてあげようか?」
「……お前さん、だんだん華琳みたいになってきてねぇ?」
「あんたが一番苦手なのって華琳だもん。お、女関係のこういうことが苦手ってのも分かってる……ば、罰なんだから甘んじて受けなさい!」
「……そりゃ二人よ
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