異端が与える理不尽
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、俺達に負けたんだってな。劉備の代わりに戦ったお前が負けた、覇王と俺の代わりに戦った部隊長は勝った。
安心しろよ、戦場では必ず殺してやるから。それまでは悔しさを噛みしめてぴーぴー喚いているがいい」
からからと笑う声が次第に遠くなっていく。
震える拳を叩きつけた焔耶は、余りの悔しさから涙を零した。
桔梗の心の中は何処か曖昧に。
悪だと自分で言った彼のことを憎めず、焔耶を生かしたことに驚愕こそすれ、責める気にもならなかった。
「……桃香様は……間違ってなど、いない」
涙ながらに語られた彼女の想いを、桔梗は肯定することも否定することも出来なかった。
〜蛇足〜 一人蚊帳の外に置かれた彼女は
「座りなさい」
静かに、しかし反抗を許さないその声は、彼にさえ冷や汗を垂らさせる代物。
携えているのは微笑みでも、まるで極寒の地に放り投げられたかのような震えを持たせる恐ろしさ。
「な、なんで起きてるんだ」
「あんだけうるさくしてたら起きるに決まってるでしょ? それよりはやく……座りなさい」
ビクリと肩を跳ねさせた彼は、大人しく彼女の言うことを聞いてその場に正座した。
「見てたのか?」
「見てないわよ。でも部隊長が重症になったのは知ってる」
「怒ってます?」
「そうね、とっても」
「何に対してかは――」
「それが分かってないなら、あんたは許昌に帰って貰う」
ジトリ、と見据えられて彼は顔を背けた。
彼女の怒りの理由を当てなければ、本当に帰すつもりなのだと目を見れば分かる。
「……部隊長には随分と無茶をさせた」
「二度と剣を握れなくなるかもしれないって」
「俺か猪々子が戦えば簡単に勝てた」
「そうね、あんたと猪々子なら魏延なんか直ぐに倒せたでしょう」
「無駄な犠牲って……わけじゃない」
「そうよ、あんた達には必要なこと……あんた達みたいな大バカ男達には、部隊長の想いを優先することは絶対に必要でしょうね……」
ツカツカと歩み寄った彼女は、睨みながらも瞳を潤ませていた。
片方の手が上がる。風を切る音が一つと……肌を叩く乾いた音が一つ。
「……頼む、分かってやってくれ」
「分かってるわよ! 無駄なんて言えるわけない! あんた達の想いだって分かってるつもり! でもっ……それでもやっぱりボクは哀しいのっ!」
震える声を耳に入れて、彼は詠の瞳をじっと見据えた。彼女の想いも、受け止めなければと。
「肯定なんかしてあげないから! 分かってるわ! あんた達は止めても無駄だって理解してる! でも! でも……だって……哀しむ人もいる
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