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乱世の確率事象改変
異端が与える理不尽
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殺す事と同じ意味を持つ選択肢。暗殺だろうと毒殺だろうと、事前に潰してしまった方がはるかに楽なはずなのに、彼はソレを選ばない。

 抗う人間を分かり易いカタチで潰さなければ、人間という生物は納得しない。
 もう既にばらまかれてしまった妄信の種は、芽吹いてからしか刈り取れない。
 桃香や焔耶を殺すよりも、どちらもを利用して憎しみや怨嗟の想いを抑え付けさせる。それが彼のとる選択肢。
 感情の排された効率の為に、彼は人の命を生贄にする。

「俺は此処でお前を殺してもいいんだが――――」
「がっ!」

 わざわざ語ってやる必要も無いと、秋斗はまだ呼吸が整っていない焔耶を蹴り倒し、冷たい瞳で見下ろし始める。
 黒いブーツで肩を抑え付け、口を引き裂いて笑った。

「とりあえず、劉備のことは理解したか? お前らが抗えば抗うほど、大陸の命は失われるんだ。それにさ、俺らを悪だと断定できないから劉玄徳は俺達を殺さないつもりだぞ?
 どれほど悪辣な策を用いようと、どれだけの人を殺そうと、きっとあの女は俺達を生かそうとするだろう」

 雛里や月や詠から聞いた情報を重ねて焔耶に送る。
 桃香の甘さを知っているモノからすれば、彼女との戦場は茶番だと断じていい。

「なにを、バカなっ」
「じゃあ帰って聞いてみな。お前の大好きな劉備様ってやつに。
 劉備は俺達を殺さない。侵略を行う覇王でさえ殺さないつもりだろうよ。そんな甘ったるいもんじゃぁ世界は変わらない。その点で言えば、部隊長を殺そうとしたお前の方がまだマシかもな」
「ぐぁっ」

 踏みつけた脚を除けると同時に、彼は焔耶を桔梗に向かって蹴り飛ばした。
 確りと受け止めた桔梗は彼を見つめる。彼女は彼の語りを理解していた。

「お主は劉備殿と絶対に相容れぬのだな」
「その通り、俺と劉備は相容れない。愛しいバカ共が生きてきたこの乱世を、“自分達が幸せに生きられたらそれでいい”なんて願いで諦観して、茶番になんざするわけにはいかないんでね」

 もう用は無い、と彼は背を向ける。
 ギシリ、と歯を噛みしめた焔耶は、黒き背中を睨みつけた。

「貴様は……貴様は“悪”だっ!」
「ああ、俺は“悪”だな」
「何が大徳っ……私は、お前の作る未来を認めないっ!」
「口にするなら誰でも出来る。認めないって言うんなら戦場で俺を殺してくれ。部隊長を殺そうとしたように、劉備の想いに矛盾して俺を殺せ。
 終わりだ、野郎共。客人を丁重にお返ししてやれ。茶菓子の土産を渡すの忘れるな」
「っ……」

 彼の声を合図に、ざ、と兵士達が立ち並ぶ。姿を覆い隠すように焔耶の前に立ちはだかった。
 兵士の壁の後ろから、飄々とした声が彼女の耳に届く。

「それよりも、ちゃんと認めとけ。クク……お前は確かに
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