異端が与える理不尽
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えるように努力するんだろ? なら、誓ってヒトゴロシなんてやりませんしさせませんって、心の底からの臣従を誓って、間違った時に抗うだけで済むことだろうが。現に俺達は、河北も中原も平穏に導いてるんだ。結果で示されたことすら満足に理解できんほど愚かじゃないだろうに」
解釈のすり替えによる思考誘導は彼の十八番。
僅かに考えさせる時間を与えて、そっとその筋道をすり替えるだけで彼の望む言論の場に引き摺り込まれる。
内容的に同義である小さな“例えば”から大きな“例えば”に変えることで、秋斗は焔耶の中にある桃香への妄信を崩しに向かったのだ。
桃香との対極的な論は、完全に真逆と言っていい。
何せ、桃香なら此処で、“従う従わないじゃなくて皆で平和を継続させられるようにしたいから”、とでもいうはずなのだから。
ナニカに服従した時点で桃香の力は失墜する。
民に抗う力を与えさせる彼女の理想というモノは、逃亡しようと味方を切り捨てようと失われないが……他の力に服従を誓うことで崩れるモノなのだ。
民の希望が、極論ではあるが戦わなくても分かり合えると説く仁や徳と言った力が……権力や武力に屈するというのなら、誰もついて来ることは無くなる。
しかし、其処まで深く考えられるか否か……突き付けて見ないと分からない。
人を救いたいのなら折れるべきであるし、理想を語るのなら折れてはならない。
――これは劉備に語ってもきっと無意味だ。疑心を持たせるなら、周りから……
武での勝利にも己の力にも酔いしれず、無感情に思考を回す彼は、戦略行動を一つ一つと積み上げていく。
ただ一つの成果だけで満足するような彼では無い。
彼の狙いは桃香への追い打ち。
無関心を突き付けた相手を、より深い虚無の渦に引き摺り込む為に行う一手。
親しくなった周りの者達に疑念をぶつけさせて、彼女を迷わせることにこそ意味がある。
主がブレれば臣下もブレる。ブレないからこそ人は付き従い追い掛けたいと望むのだ。
大切な大切な仲間から疑問をぶつけられてしまえば、今の迷っている彼女の心をより深く傷つけることが出来るだろう。
――まあ、あの女がこの世界に愛された英雄であるというのなら、時間稼ぎ程度にしか使えないだろうが。
ただし、迷いを乗り越えた時、人は成長する。それを忘れぬ彼ではないし、今回のことで叩き潰せなかった場合のことも考えていた。
いや……この言い方は正しくない。
彼は確信しているのだ。あくまで迷っているだけで、より強い意志を携えた劉備と乱世の果てで相対することになるだろう、と。
強大になった仁徳と覇王が争えばどれだけの犠牲が出るかも分からない。
成長を助けるよりも此処で潰してしまった方が人の命は救われる。焔耶をここで
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