異端が与える理不尽
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基準だと?」
「お前が受けたのはたかが一撃。殺すことも出来ない弱い一撃。
しかしだ……お前の胸に刃は届いたんだよ」
「だからっ、私はまだ立っていると言ってる!」
成り行きを見守る桔梗の目を一瞥してから、彼は盛大なため息を零した。
桔梗が今の戦いの意味を間違えていないと読み取って。
「……果実の皮を剥く小刀を振るえば人は殺せるってことだ。例え子供であろうと、人一人を殺すのに殺意も何も必要ない」
「そんなこと当たり前だろう!? わけのわからん話を持ち出してくるな!」
「いや? それと同じなんだが」
「何が同じだ! あいつが振るっていたのは殺せない武器で、こうして私が殺されていないのだから戦いは終わっていない!」
「だからお前の基準なら、な。でも部隊長や俺達の基準は違う」
漸く立ち上がった彼は、部隊長が取りこぼした槍を拾って焔耶の間合いギリギリで立ち止まった。
ギシリ、と歯軋りを一つした焔耶は彼を睨みつけた。
練兵用の槍を撫でる彼は、叩きつけられる殺気にも動じることなく悪辣な笑みを彼女に向けた。
「練兵ってのは戦場を想定して行うもんだろ? だから部隊長はお前を殺さないように戦ってたわけじゃないんだ。お前以外の全員にとって、“此処”は戦場だったんだよ。
こいつは命を賭けていた。殺してもいいって言ったのはその為で、分かった上で認めたんだ。
部隊長は確かに、お前を殺すつもりで動き、戦い、足掻き……お前の心の臓腑を穿ち抜いた。それが俺達の下した結論で、さっきまでの戦いの結果ってこった」
戯言だ、と焔耶は鋭く彼を睨みつける。しかし彼は、そんな彼女の視線を受け流して違う人物に視線を向けた。
「なぁ、厳顔? 魏延の師であるお前に尋ねよう。
練兵ってもんは戦場で戦う為にあるもんだろう? コロシアイの無い優しい優しいじゃれあいに過ぎないもんとは違う、そうだろ?」
黒瞳が穿つ。
緩い笑みを浮かべながらも、戦人としての桔梗の心を見抜き、返答を違えることは許さないと言わんばかりに。
始まる前、彼は試合と言った。しかし殺すことを是とした焔耶達が、彼の理論を打ち崩すことは出来るわけがない。
命を賭けた誇り高き兵士の心を穢すなど、武人としても戦人としても、“厳顔という一人の将”としても、看過することなど出来なかった。
苦く、彼女はため息を吐き出す。
将としての真理を突き付けられては、逃げられないと悟った為に。
「……練兵で出来んことは戦場では出来ん。お主の言う通り、練兵とは戦場を想定してしか行うモノ。儂らが行った試合はそういうもんじゃろ」
「な……き、桔梗様っ」
「黙っとれひよっこ」
ギラリと睨む視線は厳しく、焔耶の腰を引けさせる。
「師として弟子の不出来を認め
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