Vivid編
外伝〜if/ライのたどり着いた世界がCEであったなら(前編)〜
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たどり着いた世界は人種差別の権化のような世界であった。
本人が決めることができない生まれについて、他人と線引きを行い見下し、羨み、否定して、それが小競り合いから社会問題、そして戦争へと発展していくのにそうそうと時間は必要としなかった。
それがコズミック・イラと呼ばれる年号の世界における、コーディネイターとナチュラルによる社会の成り立ちであった。
ライは目を覚まし、放浪を続ける。
目覚めたばかりの頃はナイトメアフレームよりも大型の人型機動兵器が、戦車や戦闘機と言う一般的な近代兵器を蹂躙するような戦闘に嫌悪とデジャビュを感じながらも生き延びようと必死であった。
そしていつしか難民に紛れるようにして、世界を巡るように流れていく。
時には、偶然隣を歩いていた誰かを庇うこともあった。
時には、自身の容姿を売りその日を凌ぐための食費を稼いだ。
時には、生き延びるために名前も知らない誰かを殺した。
ライは流れる。どこに終わりがあるのかも分からず、そして生き抜いたところで自分に何が残るのかも知らずに。
そして、そんな放浪に突然の終わりがやってきた。
海を渡る貨物船に密航し、到着した島国に入る。だが、これまでと違い戦争がまだ身近に感じることができないその国では、犯罪に手を染める以外に彼がお金を稼ぐ方法は存在しなかったのだ。
この国に入る前に手元にあった路銀は瞬く間に底をついた。
そして素性も戸籍もないライに、真っ当な働き口があるはずもなく、再び戦地のような場所に赴く気概があるほど、彼は頑丈でもない。もう疲れてしまっていたのだ。
波の綺麗な音が聞こえる浜辺に、ライは倒れ込む。最後に彼が聞いたのは、自身の安否を確かめようと呼びかける、兄妹と思われる二人の子供の叫びであった。
目を覚ます。そこは磯臭い砂浜でも、見るに耐えない地獄でも、ましてや意識のみ存在するCの世界でもない。只々一般的なベッドの置かれたどこかの部屋であった。そして自分はその部屋のベッドに横たわっている事が、疲れきった体を包む柔らかい布団の感触からよくわかった。
「あ!起きた!」
大きな声が隣から聞こえる。そちらに顔を向けると、椅子に座ってこちらを見ている女の子がいた。
ここがどこであるのか、そして何故自分がここにいるのか等など、疑問は尽きないが何かを訪ねようとする前に彼女は勢いよく部屋を飛び出していった。
「お母さん!あの人起きたよ!」
飛び出していった部屋の扉の向こうからそんな声が聞こえてくる。
そんな子供らしい当たり前の反応を見せる、この『家庭的』な空気を肌で感じてしまったライの心に何かが込み上げた。
「大丈夫ですか?」
先ほどの女の子と違い、少しだけ警戒したような
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