暁 〜小説投稿サイト〜
魔法少女リリカルなのはStrikers〜誰が為に槍は振るわれる〜
第一章 夢追い人
第7話 彼の来た理由―前編
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元にある物は?―空の牛乳瓶。

「…あの……ラディ?」
「はい?」

 恐る恐るといった様子で声をかけたフェイトに、ラディは小首を傾げながら振り返る?―牛乳瓶(ゴミ)を片手に。

「一応言っておくけど、ポイ捨てはダメだよ」
「そんなこと言われなくても分かってますよ」

 眉を寄せて注意するフェイトにラディは苦笑を漏らした。
 それでもなお怪訝そうにするフェイトに、ラディは視線をしっかりと合わせ、口を開く。

「それに、これはオレにとってはゴミじゃなくて、立派な武器ですから」
「「「「………」」」」

 その場にいた全員が言葉を失った。
 これから仕掛けるというのにバリアジャケットだけを展開して武器(デバイス)は出さず、代わりに牛乳瓶(ゴミ)を取りだし、しかもそれが武器だと言う。
 誰も口にこそ出さないが、考えてることは同じだった。

 ダメだこの人、早くなんとかしないと……。

 ラディに身分も年齢も性別も関係なく、かわいそうなものを見るような視線が送られる。
 常識的に考えればそれは当然の反応なのだが、非常識なラディにとっては逆に、かわいそうに見えるのかどこか憂いを帯びた目でなのは達を見ていた。
 気の強い者はそれになにか言おうと口を開こうとするが、それを抑え込むようにラディが話始めた。

「スパイっていう職業はホントに辛いものでですね。敵陣の奥深くまで入り込まなきゃいけないのに、その任務の性質上、警戒されるわけにはいかないから武器の類は一切持ち込めないことも結構ある。少しニュアンスが違いますが、ベルカにはこういう小話のオチがあります」

 そこでラディはどこか楽しそうに笑いながら、肩を竦めた。

「“和平の使者なら槍は持たない”ってね」
「ぐっ」

 昔を思い出したのか、ヴィータは苦虫を噛み潰したように顔を顰め、なのははそれを見て口元を押さえながら肩を微かに震わせた。
 その反応にラディは少しの間不思議そうな顔で二人を交互に見ていたが、二人もこの話を知っていたのだろうと勝手に結論付け話を続けた。

「まぁ言いたいことはというとですね、そんな周りは全部敵、みたいなところに警戒されないよう着の身着のままで行かなきゃいけないのに、なにかの拍子にスパイだってバレたら、今度はそこから生きて絶対に味方の所まで辿り着き、情報を届けなきゃいけないんです。
だから、オレはなんだって武器にする。たとえ他の人間がゴミだと、ガラクタだと切って捨てる物でも、いやむしろ、そういったものだからこそ、オレは武器にする」

 そこで彼は一旦言葉を切った。
 その顔には話始めた時と同じ笑顔が浮かんでいる。
 しかしその笑顔にはもはや感情という中身はなかった。
 他に出す顔がないからとりあえず出しておこうとい
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