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婆娑羅絵巻
序章
菫の蕾と桃の花〜上〜
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「……さて、困ったな…。」
土御門家当主・土御門久脩(つちみかど ひさなが)は自室で頭を抱えていた。

___ある事が切っ掛けで預かった身内の【娘】
大変見る目麗しく、幼いながらに舞を舞うのが得意なのだ、が今回は其れが理由でこうして頭を抱えている。


娘はたびたび、大きな祭や儀礼に呼ばれては舞を披露し多くの人々を魅了してきた。

だが、彼の子が呼ばれるのはただ単に舞が上手いということだけではない。

娘が一度舞えば枯れたはずの草花が咲き、唄を唄えば耳にした病に侵された獣、果てには人までもが苦しんでいたのが嘘のように治ってしまうのだ。

それだけではない、人伝に噂が広まり挙句の果てには『その舞を一目でも見ればその家の安寧は永遠に約束される』等あらぬことまで言われるようになった
当然、永遠の安寧なんて約束できないし存在すらしないだろうが…。



……問題になっている人物も何処からかその噂を耳にしたのだろう。

娘の噂を聞いた或る大名の当主に自国の祭で是非ともその舞を披露して欲しい、と指名があり先日舞を披露した。

娘は普段と変わらず、若しくはそれ以上に美しい舞を披露した。
勿論その場は拍手と大喝采に包まれ無事終了した…が、
問題はこれからなのだ。

娘の舞とその容姿の美しさを気に入った大名の当主が今度は『是非とも娘を養子に迎え入れたい、娘の養子入りを認めたら好待遇で仕官をさせてやる』と申してきた。

土御門家の後継ぎとして大切に育てている娘(それに特別な能力を持っているというのもあるが…。)を渡すなんて有り得ない。
そんじょそこらの大名なら問答無用で断っていた。
だが、よりにもよって娘の養子入りを望んだのは
____織田信長


桶狭間にて海道一の弓取り・今川義元を圧倒的な兵力差でありながら討ち倒し、着々と天下に覇道を敷いている英傑
そしてたとえ身内であっても敵となれば容赦ないことや戦で女子供関係なく撫で斬りし恐れられることから第六天魔王と恐れられている男、だ。

そんな相手に『養子入りを認められない』なんて言ったら…その場でわたしの首と胴体がおさらばだろう、下手をすれば土御門家自体を潰されるかもしれない。
けれどもこちらには日ノ本一の大名家に仕官出来るという利点がある。


「家中では養子にやってもいい、って言ってる奴のが多いがなぁ…たしかに力を持ってる相手に近づくには今の土御門にとっては当然の得策だけど……。」

「…後は彼の娘自身の意思、か」

誰か、と室の外に呼び掛け少しすると1人の女中がやってくる。
娘、『鈴彦』を呼んで欲しいと彼女に頼むと「承知しました。」と応え足早に室をあとにしていった。


「………さて、どうなるかなぁ。」
女中が出ていった扉
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