交節・ “愚” と “紅” 、二種の殺戮者
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担ぎ前屈みとなった所作に、システムが感知したか腕ごと硬直した―――かと思うといきなり中断して思い切り前に身体を倒す。
「オラ死ねやぁ!!」
切っ先は相手に向けたまま剣を左腰だめに構えれば……ペールブルーの輝きが迸る。
それと共に地を蹴り剣を突き出し、自らを巻き込み一条の光芒と成って突進していく。
コレがソードスキルであり、片手直剣スキル・基本突進技【レイジスパイク】。現実ではまず考えられない速度で剣尖がスイへ目掛け、架空の空気を穿ちながら襲い来る。
「すぅ……」
際してスイはまるで慌てなかった。
両手剣を打ち下ろした位置から素早く変え、自分の身体を起こして剣を担ぎ直す体勢にし―――赤色とオレンジ色の間を行く、薄系色のライトエフェクトが刀身を包む。
彼自身のレベルとスキルのレベル、そして約一年以上も続いているゲーム生活での癖が合わさり、男達よりも数段早く【ソードスキル】はプレモーションから解き放たれる。
「ぜああっ!!」
一回転目で三人目が胸部から断ち切られ、何をなすでもなくHPが全損。断末魔すらなくポリゴン欠片となって消える。
更にその途上にあった【レイジスパイク】発動中の片手直剣を、突っ込んできた男ごと打ち上げ無防備な格好を晒させる。
「あ―――」
声を上げても、もう遅い。
男は仮想の慣性に逆らえず万歳に似たポーズで、次なる回転からの二撃目を胴にもらい真っ二つとなった。
上半身が宙を舞う。
飛び散りこぼれる赤きダメージエフェクトの粒子が、宛ら血液しぶきの如く飛び散る。
ゲームとは思えない、リアルな情景と見える、それ程に凄惨な光景を作り出す。
スイの繰り出した、両手剣スキル・範囲二連斬り【ブラスト】で……残る命は纏めて散らされたのだった。
「ふぅ……47秒ってとこか」
人を殺した罪悪感よりも、己の渦巻いていた殺気の濃さを確かめるよりも、スイが先ず口にしたのは戦闘開始たら終了まで “掛った時間” だった。
それはまるで、この行為に慣れているかのようだ。
……これだけ見れば、彼は一体どんな悪人なのかと、眉を潜めてしまうかもしれない。
しかしながら、真実は少し違う。
彼が殺していたのは実はオレンジプレイヤーと呼ばれる『犯罪者』であり、盗みやプレイヤーへの攻撃などでカーソルが通常のグリーンからオレンジへと変わる事から、システム的にもそう呼ばれている存在である。
中でもスイが相手をしていたプレイヤー達は、冗談では済まされないと分かっていながら……何の旨みがあるのか知らないが、有ろう事か本物の殺人となる “PK” を犯した殺人者―――呼称、レッドプレイヤーと呼ばれる
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