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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 22.
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っているのか?』
 アイムは、すぐには答えなかった。小さな声でぶつぶつと何がしかを唱え必死に頭を回転させている。但し、熟考している姿には程遠く、むしろ知識と感情の渦に飲み込まれもみくちゃにされている状態に近かった。
「おい。何か言えって」
 クロウが返答を求めると、ようやく謎の呪詛がやんだ。
「仕込まれたのは、いつですか?」
「待てよ。質問に質問を返すな」
「大切な事だと言っておきましょう」
 恐ろしい程の真顔が、クロウに返答を要求する。
 ふぅと、クロウは肩を落とした。
「ゆうべだ。てめぇらが次元獣をここに送り込んでくる前」
「ブラスタで変質したDフォルトを撃って、はいませんね。その結果を現段階で知る事ができないのが残念です」
「ブラスタの異変という形で、アリエティスが感知してはいないのか?」
 やはり真顔のロジャーへ、アイムが素直に「いえ、何も」と残念そうに返す。「もし異界の物体がクロウ・ブルーストの体内に入っているとするなら、歪曲という形でブラスタの性能に影響が出るでしょう。それそのものではなく、何かで包み込んでいるのかもしれません。ですから、別な形に見えるのではなく、見えなくなるのです」
「つまり、見えないってのは狙いがあっての事じゃないのか」
 疑心暗鬼の中で、ロックオンも納得と疑惑の狭間に立つ。それは不快感の伴うものだった。親友の左目の目尻が歪む。
「ええ。勿論、推測の域は出ませんが」
 追加されたアイムの言葉で、一帯の空気に不安定さが増す。事実とはいえ、これは面白くない。
「ええいっ!! 何の話をしても足場が悪い」苛立ちが限界に到達しつつあるのか、五飛がアイムの頭部に狙いを変える。「聞こえるか? ジェフリー・ワイルダー。いつまで俺達をこのままにしている!? 御託の続きなら、確保の後で聞きたい者が聞けばいい!!」
「俺も賛成だ」
 ぼそりと賛同するヒイロも、上の決断を促す。
 クロウ達2人だけでこの会議室に突入した時から、おそらく20分近くは経過している。本来ならば、のこのこ現れたインペリウムの幹部と問答を繰り返すなどおかしな光景だが、飛びかからずにいる理由というものも当然存在する。
 実は、命令が無いからではない。五飛とヒイロも意欲こそ伺わせているが、踏み出しきれない彼等なりの理由を抱えていた。
 武装した4人のうちの誰かが1歩でも前に出ただけで、アイムは消えるようにいなくなるのでは。そういう疑念に囚われているのだ。
 アイムとて人間の枠の中にいる。この包囲網と体術に長けた戦士達が相手をすれば、天才の力を発揮する前に身柄を確保できるだろう。
 もし。虚言家の愛機アリエティスが、操縦者を転移させなければ。
 機体から降りているアイムが、突然建物からいなくなる。いぶきと青山はその現場を目撃こそしなか
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