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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 22.
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力を貸そうというのですよ」
「暴発の阻止? それは違うな」
 語気を強め、ロジャーは相手の目を見て否定する。
「では何と」
「アリエティスとアイム、お前の存在は、無駄に敵の食欲を刺激してしまう。昨夜の光景がそれを証明していると言ってもいい。襲われたお前自身も、自覚はしている筈だ。また食われたいのか?」
「いえ。今尚、アリエティスの攻撃は有効です。それに、敵を刺激するという意味では、クロウ・ブルーストも同じではありませんか?」妙に穏やかなアイムの視線が、クロウを指した。「覚醒の度合いの差こそあれ、私と彼の性質には何一つ違いなどありません。ならば、『揺れる天秤』のスフィア所持者である彼もまた、残された者共の標的という事です。νガンダムのサイコミュを使い人であった者共と接触する際、危険な乾きを膨張させないと誰に証明できるでしょう」
「その為の歌でもある。心の奥底を震わせる歌は、最悪の事態を未然に防ぐ役割をも果たすと私は聞いている」
 この場合の「聞いている」は、「信じている」と同意だろう。
 ロジャーは、饒舌だった。そつなく受け流し、返すものはきっちりと返す。しかし相手に対する不快感を一切隠さずにいる分、ネゴシエイトは崩壊していた。
「しかも、先程から少々気になっているのですが。今のZEXISとZEUTHに、あのDフォルトを突破する為の策はあるのですか?」
 嘲笑の混じったアイムの声音に、得も言われぬ迫力がまとわりついた。窓を塞ぎ室内を牽制しているサンドロックの影に入りながら、男の目元が激しく歪む。
 クロウには、それが獣の気迫と映った。右の青眼と左の紫眼が、知性をも飲み込む感情の奔流を伺わせる。
 無いと敢えて答える者はなく、沈黙がアイムを更に苛立たせた。
「クロウ・ブルーストに何かあっては、私が困るのです」
 生憎、何かは既に起きてしまった。それを仲間達も知っている。
 当然誰もが明かす筈はないのだが、室内を満たす沈黙の色は幾分変わってしまった。
 無意識のうちに、クロウの右手が自身の胸の上で止まる。
「何を隠そうとしているのです?」
 呼びかけにぎょっとし、クロウとロックオンは無視もできずに驚愕する敵と見つめ合う。
 悟られた。それは確信だ。
「…何という事でしょう。仕込まれたのですね、あの者共に」
 アイムが打ちのめされている。
 滲み出てくる感情は、失意の念。そして、まさかの同情か。
『アイム・ライアードに、まさかの読み違いが起きたようだな』ロックオンの手にする携帯端末で、発信者の交代が行われる。大塚に代わり声だけの参加を始めたのは、歌を信奉する世界からの来訪者だ。『お前は今、「仕込む」と言ったな。見えないが、間違いなくそこにある物。あれの正体に、幾らかの心当たりがあるのだな。クロウの体内から取り出す方法を知
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