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月下に咲く薔薇
月下に咲く薔薇 22.
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「違う」とも言いたくならず、クロウはキリコの背に守られたまま沈黙した。何処かに嘘がある。内容としては、そう決めつけていい怪しさを十分に含んでいるのがわかる。
 なのに、「彼」を兄、ZEXISに助力を求めた声の主を妹と置き換えるだけで、妙に腑に落ちるものがあった。少なくともアイムは、2人の関係を家族なのだとクロウ達に思い込ませたいらしい。
「既に一度接触しているのでしたら、あの植物を操る者共に人間の思考や感情が残っている事には気づいているのでしょう? あなた方が好む、世界平和の為です」虚言家が、いつもの澄まし顔に戻った。そして、至極穏やかに残酷な話へと切り替える。「殺してしまいなさい。最早、人間の振りしかできない者など。『あれは人間なのだ』という想像の中でもがきながら」
「ちっ! わざわざ、それを言いに来やがったのか!? カスが!!」
 アイムに掴みかかろうとするクロウを、背後からロックオンが制止し、前ではキリコが「よせ」と堰き止める。再び虚言家と目が合う中、最後まで話を聞いてしまった自分の愚行に激しい怒りを覚え抑えがきかない。
 つくづく自分の甘さを思い知る。ロジャーの様子を見れば、一目瞭然だ。最後に足した言葉は、ZEUTHの心にひびを入れる為、アイムが狙って使ったものの筈。
 何故、最後まで言わせてしまったのか。ZEUTHは、ZEXISと同じ痛みを抱えていると気づいていたのに。
「想像など必要ない」よく通るヒイロの声が、アイムを拒絶する。「この世界の脅威となるなら、何者であろうと排除する。俺達に必要なのは、任務を遂行する為に必要な決意と覚悟。それだけだ」
 一切の迷いを感じさせない少年の口調が、アイムの支配から場を解放する。
 そんなヒイロに触発されたのか、ロジャーがようやく自分を取り戻した。肩が軽く上下し、瞬きと共に「いかんな」と独りごちる。
 更に、トロワが淡々と付け加えた。
「ZEUTHの過去に何があったのか。俺達は問題にしないし、防ぎきれなかった大惨事に思うところがあるのはZEXISも同じだ。烙印の意味も、大方の見当はついている。だから、戦え。しかし、ZEUTHだけで戦うな」
「その通りだ。…まさか、君に諭されるとは」と、ロジャーが頭を垂れる代わりに敗北した大人の顔をトロワに向ける。
 誰もが薄々察している通り、アイムが触れたのは、おそらくZEUTHにとって存在や特殊性の根幹に関わる過去だ。同じものが先程の会議にも顔を覗かせ、ZEXISメンバーの神経をちりちりと刺激し出席者全員の記憶に残った。一体誰が忘れよう。
 明かす事を異様に避けるその様子に戸惑いも覚えるが、クロウ達は待っている。彼等が自らその件に触れ全てを明かしてくれる時を。嫌ならばそれでも構わないが、いずれ重い過去に決着をつけるべき時が訪れる点はZEUTHもZE
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