月下に咲く薔薇 22.
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せめぎ合う。しかし、最後の最後に怒濤の押しで圧勝をもぎ取ったのは後者だった。「昨日の朝、ロックオンの手元からも1本のバラが突然消えた。あれも同じ現象なんだな?」
「おや、そんな事が起きていたのですか」
ロックオンに背を小突かれ、クロウは明かしすぎた事を悟る。後悔の念は湧いたが、それよりも遙かに大きな好奇心が軽く凌駕し自身の大半を占めていった。
何とも癪だが、辻褄が合っている事を認めずにはいられない。
「ああ。昨夜俺には、何株も現れてあの次元獣もどきが造られていくように見えた。だが実際には、1株がバカみてぇに枝分かれしてる瞬間だったって事か。5の枠を超えないようにする為に」
3に1を足した結果が、4。
あの怪植物が出現した時点で、敵は5という限られた枠の全てを使いきってしまった事になる。3本のバラと1匹の次元獣もどき。残る1つは、昨夜の出撃前からクロウの体内に存在している。
目前の男がバトルキャンプ上空にいた昨夜、その5の枠全てが埋まっていた事をアイムは未だ知らずにいた。話しぶりからも伝わってくるし、クロウに対する歪んだ執着から察しても、追い回している対象に敵が異物を仕込んだと知って無関心を装える性格ではなかろう。
珍しい事もあるものだ。クロウの心の振幅にはひどく敏感な男が、異物に対する不安を抱えたままの心中をこうも覗いてこないとは。
「その通りです」
微笑するアイムに、クロウは一瞬ぎくりとした。
「ライノダモンを取り込んだ事で、試験体が生命力を増したのでしょう。現在、このバトルキャンプに残されている敵の個体は幾つですか?」
答えかけようとするクロウを、「よせっ!!!」とロックオンが制する。「こいつは罠だ。自分から共犯者になりたいのか!?」
あからさまに目つきを悪くするアイムが、沈黙した。舌打ちが一つ聞こえたのは、あながち幻聴ではなさそうだ。
『では、私が代わって答えよう。アイム・ライアード』
突如、クロウの腰の辺りから声がする。発信主は、このバトルキャンプの最高責任者である大塚長官、その人だ。
『バラの花なら、3本。昨日の午前に1本がその会議室に移され、夜までに更に2本が追加された。…なるほど。1株のバラであの大きさが形成できれば、ZEXISやインペリウムへの攻撃も可能になる、と。考えたものだな。5の枠は余りにも小さい。ショッピング・モールで花を1本回収し、ぎりぎりのところで敵は出現数を維持していた訳だ』
大塚も考えたもので、痕跡全てに関する情報を欲したアイムに、あくまで花の数だけ提供し答えた事にしてしまった。
「バラの花なら、ですか」大塚の思惑を理解し、食い足らないアイムの声が不満の為に渋くなる。
携帯端末を握り直したロックオンが、端末を敢えてアイムの目の高さにまで上げた。機械を通して2人は互い
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