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逆さの砂時計
孤独を歌う者 5
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 青い空。繁る森の緑。散乱する石の塊。ひび割れた石床に描かれた翼の紋様。
 空間から追い出した筈の連中が、俺とマリアの器にしがみ付くアリアを円く取り囲む。
 此処は……
 「本当、人の話を……聴かな……ぐっ」
 「クロスツェルさん!」
 フィレスに肩を支えられながら、口元を押さえて石床に片膝を突くクロスツェル。
 ……酷い顔色だ。脂汗が額から顎に伝い落ちる。
 「……お前が時間を止めて、アリアが俺達を連れて来たのか。余計な事を」
 純白の翼を背負って小刻みに肩を揺らす女神は、ロザリアの少女らしい容姿から、アリアの女性らしい姿に変貌している。
 主導権をアリアに返したのか?
 「……余計な事? 冗談を言わないでください。貴方達、意外と物忘れが激しいですね。仕方ありません。理解するまで、何度でも教えて差し上げましょう」
 呼吸を整えて立ち上がったクロスツェルがフィレスに「大丈夫です」と言って、俺の傍に寄って来た。
 右手がすぅっと上がり
 「……痛いですか?」
 派手な破裂音の後、少し遅れて左頬にじわりと熱が滲む。
 物理的な痛みはあまり無い。
 だが……仕草で何をするか予想は付いたのに、何故か驚いている自分が居る。
 「……いや」
 「そうですか。まぁ良いでしょう。では本題です。少々苛立っているので一息に並べますが、決して聴き逃さないようにお願いしますね」
 深く息を吸って、吐いて、また吸って……ぴたりと止める。
 金色の目が俺を真っ直ぐに見て、にこっと笑った。
 「貴方達は過去の(しがらみ)を解消してすっきりしたかも知れませんが、すっきりされては困ると言ってるんですよ、私達は。生物学的な観点から言えば貴方達はまだ死んでいませんし、死んで終わらせるとか、最悪過ぎて吐き気がします。貴方達の行為によって世界はもう滅茶苦茶にされていますし、何よりアリアを産ませて産んで放置した挙げ句利用して「はい、さよなら」って、人間的な考え方ではそういうのを外道って言うんですよ。知ってますか? 知ってますよね。数千年も世界を傍観していたんですから。その上「諦めました。ごめんなさい。死ねば良いんですよね。さようなら。」とか、自己陶酔も甚だしい結論を、他人や実の子供に押し付けるのは止めてくれませんか。育児放棄に存在否定に人格否定……何処まで保護者としての責任に蓋をすれば気が済むんですか。子供は、玩具と食事があれば育つってものじゃないんですよ。過去を大切にするのは結構です。過去に犯した罪なら、罰は背負って当然です。ですが、それを死で(あがな)えると思うのは感情的且つ即物的にしてあまりにも愚かしい。現実逃避という卑劣な手段で、被害者から目を逸らさないでいただきたい。貴方達は生きて生きて生きて、その間ずっと被害者達に罵詈雑言を浴びせ掛けられ続け
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