暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン〜Another story〜
GGO編
第209話 最初の一歩
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視線を緩めた。
 
 詩乃は、あの世界で、ぼろぼろにされた初心者を狙ったスコードロンに入っていた時の気持ちを少なからず思い出してしまった。

「……確かに、人には向けないほうがいいわ。これ」

 詩乃は、そう言いながら、ハンマーをデコックし、2つの安全装置(セーフティ)を元に戻すと、グリップを向けて遠藤に差し出した。 その意味を理解する事よりも早く身体が反応をしてしまったのだろう。遠藤はビクリと振るわせていたが、恐る恐るというふうに手を伸ばし、モデルガンを受け取っていた。

「……じゃあね。私、用があるから」

 そう言うと、詩乃は振り向き、鞄を拾い上げ マフラーを引き上げた。
 
 その肩越しに言葉なのだが、遠藤たちは動かなかった。見た事もない詩乃の姿を見て、どう反応すれば良いのか、なにを言えば良いのか、何1つ浮かぶ事なく ただただ時間だけが過ぎていく。
 詩乃が完全に視界から消えさあった後も、3人は無言のまま立ち尽くしていた。


                                                         


 そして、詩乃はここで 漸く緊張の糸が切れたのだろう。
 その場にへたりこみそうになったのを必死にこらえつつ、校舎の壁に手を付いた。
 
「……これが、最初の一歩。……1人じゃ 何も出来ません。……貴方がいないと何も出来ません、じゃ駄目、だよね」

 いつまでも甘える訳にもいかないから。
 詩乃は萎えかけた足を鞭打って、そのまま無理矢理歩行を開始していった。









 そして、モデルガンを扱い、その冷たく重い感覚が薄れ始めた頃、指先で眼鏡を取り出して、そっと顔にかけた。

 丁度、校舎の西昇降口と体育館をつなぐ渡り廊下に差し掛かった所だ。複数の運動部が共同で使用しているグラウンドを超え、その南側の小さな林を通り抜けた先が、正門前の広場だ。
 放課後であると言う事もあり、ここまでくれば生徒たちが三々五々連れ立って帰路に着いている。その間を早足で縫って校門に向かおうとしていた時、詩乃はふと首をかしげた。

 学校の敷地を囲む高い塀の内側に、いくつかの女子生徒の集団が足を止めて、チラチラと門の方を見て、何かを話しているのだ。その撃ちの2人が、同じクラスで そこそこ仲の良い生徒たちであるのにも気づいて、詩乃は彼女達に歩み寄った。彼女達も詩乃に気づいたのだろう、にこっと笑って手を上げると詩乃に声をかけた。

「朝田さん、今帰り?」
「うん。――何、してるの?」

 それを訊くと、栗色の髪を二つに束ねたもうひとりが、肩をすくめて少し笑いながら答えた。

「あのね。校門のとこに、この辺の制服じゃない男の子がいるの。バイ
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