黒と繋ぎし想い華
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た。
押し掛けた俺達の前に立つのは黒髪の麗人。大剣を背中に背負ったその将の一睨みは、戦場に居る御大将と等しい威圧を叩きつける。
「用事なら私が承る。同志の死に思う所があるのは分かるが、さすがに華琳様の元へ直接は行かせられん」
何か間違いがあってはいけないと、その将は言っている。覇王の右腕は俺達のことを信用しきってはいない。それはきっと正しいことだ。俺達が暴走する可能性なんて、普通の奴等は考えちまうだろうから。別に腹が立ったりもしねぇ。
御大将の命令は機を待て。命令を破るわけがない。例え……最精鋭が全滅したと聞かされようと。それを他の奴等に理解しろって言っても無理な話。
ただ、これだけは伝えておかなければならない。そして“動いてくれない”のなら、俺達が動くしかねぇんだから。
言伝でも構わない。きっと耳に届けば判断してくれるはず。そう願っていたのは他の奴も同じだったようで、真っ先に第三のバカが口を開いた。
「じゃあ伝えてくれ、夏候惇様! 俺ら徐晃隊の最精鋭が全滅しても絶対に死なない奴が居る! 捨て奸の跡は見たが“あいつ”の死体がねぇんだ! “あいつ”は、絶対に生きてる!」
「だから俺らに探させてくれよ! 森の中か、それとも川の下流か……どっかで“あいつ”は生きて俺達を待ってるはずなんだ!」
「……それは出来ん」
「な、なんでだよっ」
悲痛に眉を顰めたその人は、憂いと悲哀を俺達に向けた。
「……此れから戦場に立って貰うからだ。華琳様は既に、お前達を戦場に立たせよと命じられた」
「そりゃ無理だ。俺らの命令は待機。御大将の命令があるまでは動かねぇし働かねぇぞ。でも出来ることはやる。御大将がいねぇなら俺達には“あいつ”が必要だ」
即座に言い返した。絶対の命令を破ることは出来ない。御大将が命じない限り動けない。俺達があの方と鳳統様の策を壊すわけにはいかないから。
そうだ。“あいつ”がいればせめて動いてもいい。“あいつ”だけは御大将の代わりに俺達を使ってもいいし動かしてもいい資格を持ってる。
俺達御大将が居ない時に黒麒麟の身体を動かせるのは大陸一の軍師様と……俺らの右腕である副長だけだ。
尚も悲哀を向け続けるその人は、唇を僅かに噛んでから続けた。
「今回の行動はな、鳳統の策なのだ。徐晃が考えていた戦を行うにはお前達を使えと華琳様に献策したのだ。お前達が徐晃の命令しか聞かないことは分かっている……だが、お前達が戦うことは徐晃の為だと知れ」
茫然。俺も皆も、一寸思考が止まった。
御大将の命令は絶対。しかし倒れて何も命じられない今、副長や鳳統様の命令に従うことが俺らの次の行動。
判断が下せない状況では他の誰かが……俺達の在り方は、そうやっていつでも回ってきた。
「……
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