黒と繋ぎし想い華
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何度も大地に武器を打ちつけるように、と。
部隊長が行っているのはただそれだけ。数多の兵士の刃が行き交う戦場で、徐晃隊が生き残る為にはこうして刃を受け流す動作は必須であり、元々彼が手ほどきした動き。
防御主体戦術の基礎は、一人が受け流しの役目を負うことにこそある。一人以上の相手の攻撃を見極め、受け流し、もう一人の為に攻撃の隙を作り上げる。それが出来て初めて徐晃隊の基礎戦術は成り立つのだ。
四番隊の部隊長ともなれば、一介の兵士レベルではなく武人レベルの攻撃も見極めることくらいは出来た。身体が反応するかは別として、であるが。
例えば春蘭や霞の一撃は、見えようとも防ぐことは出来ない。受け流そうとしても刃が乗った瞬間に叩き斬られる、もしくは神速に反応できない内に斬られるだけ。
黒麒麟が相手の時は、一人に的を絞らせないようにするから戦える。最速の突きは、やはり部隊長クラスでも避けることは出来なかった。唯一見極めが出来るようになったのは失われた右腕だけ。それも長い時を共に過ごし、血を吐き続ける一騎打ちを繰り返してきたから得た慣れを以ってしてだ。
故に、相手が焔耶だったのは幸いであった。
重量武器の一撃は予備動作が見えやすい。軌道を変幻自在に変えることも難しい。だから部隊長は、重い一撃であろうと受け流すことが出来たのだ。
ただ、これが黒麒麟であったなら、完全に流した後、刃の軌道の反転逆撃や体術での反撃も出来る。しかし部隊長にそれほどの力量などない。
受け流すだけで精一杯。暴力的な重量武器の一撃一撃は、やはり部隊長が受けるには鈍重に過ぎる……が、致命傷にならないのならそれだけで御の字と言えよう。
受ける度に腕に痺れが走る。幾重も刃を受けていれば握力も衰えてくる。それならば、痺れが取れるまでは脚で攪乱してやればいい。
今度は避けることだけに念頭を置いているから当たらない。生き残ることに全てを賭けた戦場と同じく、部隊長はその任務を遂行していた。
「チィッ……避けるだけで私に勝てると思ってるのか!」
「……」
寒気のするような大振り。余裕で避けられるわけではない。振られる武器を剣と槍で受け流し、やはり地面に何度も叩きつける。
次第に肩で息をするようになった部隊長は甚大な脂汗を額から流していた。
――まだか、まだこいつのバカ力は衰えねぇのか。
このままではジリ貧だ。体力も大きく消耗している。
一撃の度に大地を抉らせ、武器に伝わる反動を変えさせているはずなのに、未だ焔耶の攻撃の威力は衰えず。息は僅かにしか上がっていない。
力も速さも劣る自分では、無理やり攻めても勝利を得ることは出来ない。一振りで叩き潰され、脳髄を撒き散らして死ぬだろう。
だからこそ彼が狙っているのはたった一度の好機
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