黒と繋ぎし想い華
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それがどれだけ……嬉しいことか。
空を見上げた彼は、震える吐息を吐き出して……感情を殺しているようで殺し切れていない声を紡いだ。
「……繋いだ絆が失われた時、やっぱり胸は痛いと思う。でも、確かにあいつらが此処に居たんだって証明を、自分達の胸に刻んでやれ。お前らの心の中には、そいつらが生きてるよ」
嗚呼、と嘆息が漏れた。
やっと分かった。想いを繋ぐってのがどういうことか。
「俺は“忘れない”。忘れてなんかやらない。お前らが俺を憎んで死のうとも、お前らが袂を分かっても、俺はお前らが生きた証を“忘れない”」
俺らは忘れたらダメなんだ。
哀しいけど、辛いけど、苦しいけど……確かに在った想いのカタチを、俺達と……あの人が繋ぐ世に咲かせる為に。
弔いの酒が終わった後、御大将がゆっくりと歩いて行った場に周倉が残ってた。
「部隊の人間が増えても、あの人は俺らみたいな兵士を忘れねぇ。此のまま義勇軍から本物の軍になりゃあ関わりが少なくなるだろうけど、きっとあの人はバカみたいに兵士の名前を覚えると思う。
俺らは捨て駒だ。たかが兵士だ。だけど、そんな捨て駒を“御大将”は忘れないし、忘れられない。でも俺らは心が擦れ切れちまうからあの人みたいにはなれねぇと思う。兵士やってたら、忘れなけりゃやってらんねぇもんもあるんだから。
だから、だからよ、せめて近くの奴だけ、一人だけでも多くでいい……俺らはずっと忘れないでいようぜ」
俺と同じバカ共ばっかりの“御大将”の下、俺達は忘れないことで想いの華を繋いで行く。
隣の“誰か”じゃなくて、隣の“こいつ”を守ろう。
後ろの“誰か”じゃなくて、後ろの“あいつ”に任せよう。
だってよ、“御大将”は……俺らをそうやって信じてくれてるんだ。
忘れることがイイことなのか、忘れないことがイイことなのかは俺には分からない。
でも……俺達徐晃隊は、御大将と一緒に“忘れない”選択をして、やっと“黒麒麟”になれたんだ。
†
「クソっ……何故だっ! どうして鈍砕骨が当たらないっ!」
憎らしげに声を上げる焔耶とギリギリを見極めて避ける部隊長。
鈍砕骨と呼ばれる武器は間違いなく当たれば一撃必殺の威力を持つだろう。
焔耶の表現は正しくない。鈍砕骨は……ある意味で当たっている。部隊長の身体に当たっていないだけ、当たっているが傷を与えられていない、というのが正解。
真剣そのモノであっても、焔耶は度重なる挑発の類で武器の軌道に乱れがあった。いつもならまだ速く、力強くあったはず。当たらないことへの焦りと、たかだか兵士だと侮る心が招いた結果に過ぎない。
振られる度に躱しながら刃を重ね、滑らせるように力を流す……敵が
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