黒と繋ぎし想い華
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うのなら抑えなければならない。
兵士としての仕事はいつだって捨て駒。命一つに拘っていては、軍……果ては国の勝利など得られない。
黒麒麟はその為に兵士を絶対遵守の命令で縛り上げ、彼らが自身の命をいつでも捨てられる最悪の死兵へと昇華させてきた。
誰だって死ぬのは恐ろしいが、畏れが一寸でも見えれば強大な相手の前では死あるのみ……よって、部隊として所属させるよりも前に、既に自分達は死んでいるのだと覚悟を持たせ、畏れの無い冷静沈着な状態で虎視眈々と敵の命を狙わせる……そんな死兵に仕立て上げた。
捨て駒で構わない、と部隊長は思う。
こんなちっぽけな命を使って自分達が決して勝てなかったモノを打ち倒せるのなら、雲の上とも思っていた存在に勝てるなら、男としてなんの悔いがあらんや。
焔耶の悔しげな表情を見つつ、其処でふと、化け物相手の時だけで自分達はこのように命を捨てるのだろうかと考える。
答えは……否。
――たった一人で一万の軍を相手にしろって言われても……
敵が武人でなくとも同じ事。
それでもやはり、捨て駒で構わないと彼は思った。
――俺らは変わらず命を捨てる。だってよ……
根拠はたった一つ、たった一人の存在故に。
見てきた事実。聞いた話。理解しつくしている事柄。
――俺らが憧れるあの人は……“御大将”は……“徐公明”は……
大怪我をしていようと、望みの欠片も無い絶望的な状況であろうと、裏切りの刃で死ぬ可能性があろうと、己と友と仲間を信じて、自分勝手に突き進む……そんな大バカ者が率いているから、彼らは何時もいつだって……“そうあれかし”。
――敵が十万だろうが百万だろうが……世界全てを敵に回したとしても……世の平穏の為ならたった一人でも抗うんだっ!
にやり、と不敵な笑みが漏れた。
斜め上に行った思考の果て、自分のバカさ加減に呆れながらも、憧れの主に近付けることが嬉しくて仕方ない。
比べてみろ、目の前に居るモノは一万の兵士に勝るか?
思い出せ、目の前に居るモノは自分達の主よりも強大か?
なんのことがあろう……所詮はか弱き女で、自分達が戦う敵達と比較すれば取るに足らない相手である。
ならば、そんな相手一人に負けることこそ、こんな所で無様に命を落とすことこそ、男の恥……そして、愛しい主の期待に対する裏切りだ。
「たかが一撃を避けただけで何を笑っている?」
「へへっ、お前にゃ分からねぇさ。俺らの気持ちなんて」
侮辱とは違う声音だが、焔耶の心に苛立ちを募らせるには十分。轟と立ち上がる闘気は勢いを増し、反して鋭く研ぎ澄まされる瞳は憤慨に呑まれず未だ冷静。
深く、深く息を吐く。
嘗てない程に集中力を研ぎ澄ませている部隊長は、今まで繰り返してき
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