黒と繋ぎし想い華
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人の将の冷静さを失わせるように動かしていたのは彼らから見ても明らか。
それならば状況を利用するのが徐晃隊の特性であり、彼の思惑に合わせて“独自で動く”のが黒麒麟の身体として相応しい。
これでやっと部隊長は、最精鋭の小隊長達と同等になったのだ。
「この一撃で果てろっ!」
再び振りかぶられた鈍砕骨は大振りそのモノ。軌道を読むことなど誰でも容易い一撃に成り果てた。
――待ってたぜぇ……この隙をっ
ずっと狙っていた。
まず試したのは大地に打ちつけさせて威力を低下させること。疲れさせることが出来たなら御の字。時機も速さも分かり易い一撃が欲しかったから、部隊長は避けるに留めていた。
疲れないとなればどうにか隙をこじ開けるしかない。戦いながら考えていたが、終ぞ浮かぶことは無かった。
やっと得たのは覚悟を決めてから。
大けがをせずにいる戦い方をしている時点で、自分達のソレとはかけ離れていたと気付く。
だから誘った。だから力を残した。だから動かずに機を待った……挑発を重ねて合わせてくれた秋斗に感謝しながら。
剣を持つ腕は折れてしまった。肩も抉られ、もう上がりそうにない。頭も無理矢理の受け流しの衝撃でくらくらする。
しかし槍だけは……黒麒麟の角の如き槍だけは残っている。左手に持ったこの槍だけが、正真正銘最後の力。
脚は膝が笑っている。しかしまだ少しだけは動いてくれる。
見え見えの一撃に合わせるにしても、やはりギリギリとなるだろう。
――これで……この一撃でっ
精一杯の力を込めて槍を握った。
軋む身体を無視して右足に力を込めた。
「お前の――――」
「俺の――――」
上段からの凶悪な一撃は確実に殺す為のモノ。
下段からの頼りない一撃は勝利を掴む為のモノ。
焔耶は受けなど考えていない。部隊長は受けるつもりなど元から無い。
まだ死ねないと心を決めた部隊長は、不敵でありながらも子供のように笑う。
正反対の言の葉を紡ぎながら、二つの影が交差した。
「負けだ――――っ!」
「勝ちだ――――っ」
瞬きをする間の出来事で、儚き想いが咲き誇る。
黒が抱く空の中で、一際輝きを放つ大きな星々よりも……小さな星々が色付ける空が美しかった。
人の倒れる音が一つ。空に上がるは幾多モノ声。
野太い声ばかりが張り上がるその最中で、黒はそっと頬を緩める。
彼らの声に合わせて、秋斗は大切な約束を呟いて贈った。
乱世に華を、世に――――
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