暁 〜小説投稿サイト〜
乱世の確率事象改変
黒と繋ぎし想い華
[17/19]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
を見上げながら、部隊長は穏やかな笑みを崩す事なく。
 やけにゆるりと落ちてくる鉄塊と、もどかしい程に遅い自分の身体の動きを自嘲しつつも……誇らしげに小さく、小さく笑った。

 走馬灯のように駆け巡る楽しい時の数々と、悲哀と絶望の記憶達。
 心を燃やすのはいつだって誰かへの想いと男の意地だった。

 死んだバカ共の声が聴こえた気がした。
 遠くで帰還を待ってるバカ共の声が聴こえた気がした。
 周りの奴等の声が響いた気がした。
 副長の声が聴こえた気がした。

 そして……からからと笑う彼の声が……

 轟、と燃えたのはナニカ。
 心の内に深く深く沈めていた負の感情と、自身の身と脳髄を焦がす程の絶望の記憶。

――俺はまだ、“忘れてねぇ”

 金属音と肉の潰れる音が一つずつ。

 ゆるりと黒が濃くなった宵闇の頃のこと。






 †






 なんでだよ。

 なんであの人が壊されなくちゃならなかったんだ。

 誰よりも想いを大切にしてきたのに。

 誰よりも世界を想ってきたのに。

 誰よりも“人”を愛してたのに。

 なんで“裏切り”を受けるんだよ。


――忘れないって約束したから


 俺らは信じたぞ。

 俺らはいつだって信じてた。

 敵になんざならねぇって信じてた。

 なのに、なんでだ。

 なんであいつらは信じねぇんだ。


――皆と一緒に繋いで来たから


 心の叫びが聞こえないのか

 信じてくれ、信じてくれって……

 いつだってあの人は心の中で叫んでた。


――大切に大切に想いの華を咲かせ続けて来たから……


 “忘れない”で繋いで来たから、壊されちまった。

 約束してきた世界を作ろうと、“忘れない”でいたから


――俺達の“御大将”は、俺達への強すぎる想いで壊れちまった。


 信じなかったら嘘になる。あの人は嘘つきだって思っちまう。

 嘘、嘘、嘘……全部が嘘になっちまう。

 あの人が繋いだモノも、あの人がしてきた約束も、あの人が“忘れない”で居ることさえも。


――俺達は……壊れちまうくらいに俺達を想ってくれるあんたと出会えて……世界で一番幸せな兵士になれたんだぜ?


 俺達は“忘れてない”

 ちゃんと“ホントノコト”を伝えてやらなきゃなんねぇ。

『御大将が幸せに暮らせる世界になるなら、それが俺達皆にとっての平穏な世界なんだってことを』

 だから……だからよ……












――こんな所で、死ぬわけにはいかねぇな。











 赤が垂れる
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ