黒と繋ぎし想い華
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を越えたもんと越えてないもんの違いを」
あくまで彼女を出すつもりはないようで、秋斗はふいと視線を切った。
ゆっくりと焔耶に視線を合わせて、にやりと笑う。
「無駄だと思ってもまだ勝負はついてないぞ魏延。部隊長はまだ負けてないし、命惜しさに戦いを降りるような腰抜けじゃない。自分が行くって言ったなら、死んでも遣り切るのが筋ってもんだ」
「命を無駄に散らさせるなど……よくも貴様、劉備軍に所属出来たな」
睨む視線は厳しく彼に向く。相も変わらず、秋斗の緩い笑みは崩れない。
「個人の命の使い方にまで口を挟むなよ。男の意地を理解出来ないようだから無理ねぇが」
「ふん、くだらない。その意地の為に命を捨てて、なんになるというのだ」
「男は意地張ってなんぼなのさ。それを穢すことこそ俺には出来ないね。お前にはこう言ってやろうか? “所詮、女如きには俺らのキモチなんざ分かんねぇよ”ってな。
ほら、殺せるなら殺せ。殺さない限り終わらず、お前は俺と戦えないんだが?」
「……いちいちと癪に障るやつだ。殺す価値もないと言ってるんだぞ、私は」
「価値のある無しじゃなくて結果を示せ。それともアレか?
劉備様だぁいすき!な魏延ちゃんはやっぱり人の命を奪う事にびびっちゃってんのかなぁ? きゃー、やっさしぃ♪」
急に切り替わり、からからと笑いを浮かべた秋斗の煽りは、焔耶の苛立ちを増やさせるには十分。
ビキビキと音が聴こえそうなほど額に走った青筋は彼女の苛立ちをまざまざと表していた。
「き、さ、まぁ〜! いいだろう! こいつの後で叩き潰してやるから精々踏ん反り返っているがいい!」
相手が悪い。人がどうすれば喜ぶかを考え続ける彼にとって、人がどうすれば怒るかは直ぐにはじける。
曹操軍でも明の次くらいには挑発が得意なのだ。人を煽って思考誘導するのは、悪戯好きな彼としての本質に近い。行き過ぎれば怒らせると分かっているからこそ、丁度良く煽動出来るというモノ。
桔梗は単純な挑発に乗ってしまった焔耶を見てため息を吐いた。
――しっかりと今の相手を見んか、このバカモノめ。
兎であろうと全力で狩る虎であれと教えてきたはずが、その体を崩してしまった弟子の姿に額を抑える。
少しでも成長に繋がればとは思うからこそ、口には出さなかった。
動かなくなった部隊長を見やり、彼女は思考に潜る。
――部隊長にしてはよくやった方じゃが焔耶の方がやはり上。しかし結果が読めん。黒麒麟が何故あれほど勝利を疑っていないのかも。
師匠である彼女にも……焔耶の勝敗の行方は分からない。十中八九は勝つと思っていた。しかし場の空気がまるで焔耶の勝ちを霧散させてしまうかのよう。
誰が見ても負けとしか思えない実力差であるのに、焔耶の勝ちを
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