黒と繋ぎし想い華
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えば徐晃隊ではなくなってしまう。
抗うことこそ人の強さ。彼らの指標は理不尽と認めずに抗って抗って強くなってきた。
足りなかったと思いこそすれ、弱者の弁舌を上げることはない。他人を責めることこそ、彼らにとっては無価値。
「どうした? 最初の威勢は何処にいった?」
「へ……へへ」
「ちっ……まだ笑うのか」
浮かべるのは笑み。絶望に打ちひしがれた顔など、死んでも見せるつもりはなかった。
ゆっくりと肩に鈍砕骨を担いだ焔耶を見ながら、部隊長は笑い続ける。
――ああ、でもなんだ……こいつの剣は……
笑みの意味が僅かに変わる。
まともに受けた事で、部隊長はあることに気付いた。
「はは、余裕だ。ぜんっぜん痛くねぇ」
数多く受けた小さな傷からも痛みは全くない。肉体を凌駕した精神が痛みを消しているのだ。
それでもふらつく脚は、自分が限界だと示していた。
「立っていることがやっとの男がよく言う」
だらり、と部隊長は剣と槍を下げた。不敵な笑みを顔に張り付けたままで。
せめて少しだけでも力を残しておこうと。
「へへ……それでもお前には負けねぇよ」
「まだほざくかっ」
激発の声が場によく響いた。しかし包む空気の質は一筋も乱れない。
誰が見ても勝敗など明らかであるのに、兵士達の誰一人として部隊長の敗北を信じておらず、勝利を確信していた。
「負けない、負けないんだ。俺らは……“徐晃隊”だからな」
ついには、部隊長が目を瞑る。深く紡がれる呼吸だけを残し、ぴくりとも動かなくなった。
「おい、徐晃。もうやめさせろ。これ以上は無駄だ」
もはや決したと言わんばかりに、コキコキと首を鳴らして焔耶が告げる。憎らしい、と秋斗を睨みながら。
反して、彼は脚を組んだままでつまらなそうに目を細めた。
「無駄? なんでだ? まだ終わってないじゃないか」
「……お前と違って私は軽々と命を扱ったりしない。さっきは苛立っていたから売り言葉に買い言葉で答えたが、この程度の相手の命を奪っても価値が無い」
「へぇ……お優しいことで」
淡々と言葉を紡ぐ彼の袖を、隣に立っていた猪々子が引いた。
「アニキ、あたいが行ってもいい?」
「あぁ? お前までそんなこと言うのか?」
「だって、だってよ……」
――副長や最精鋭ならいざしらず、第四はあたい相手に十人以上でも勝てなかったんだぞ
思っても、口には出せなかった。
下から睨みつけてくる黒瞳が、異常な殺気を映していたが故に。
「お前達が部隊演習で勝てないのはそのせいだ、猪々子」
「え……?」
「……官渡のあの時なら勝てたかもしれないが今は無理だな」
「それってどういう……」
「まぁ見てろ。線引き
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