黒と繋ぎし想い華
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俺達の全てに誓って。
「……バカ者どもめっ」
「ふふ、期待してるわ、“黒麒麟の身体”」
不満があるような声を出した将軍と、楽しげに謡った覇王。
もし、初めから御大将が此処で戦っていたなら、と思ってしまうのも詮無き哉。
俺達のわがままを聞いてくれた彼女達の元でなら、きっと御大将は壊れないと……その時はそう思えた。
得てして、世界は残酷だ。
深く、深く繋いで来た絆。代わりの効かない唯一の存在。彼の心の一番の支えは……忠義と想念を貫いて旅立ってしまった。
覇王が大剣の背中に担がれてきた副長を見て俺達は歓喜した。喜ばねぇはずがない。
しかしピクリとも動かないあいつを見て理解し……どん底に落とされた。
「……すまん」
優しく、静かに大きな身を降ろしての一言に、誰も返事を返せなかった。
誰が責められよう。彼女は俺達の代わりに探してきてくれたんだ。一目瞭然、副長の身体の状態を見れば、俺達が行っても助からなかったことくらい分かる。
何も言うまいと去って行く将軍に対して、示し合せずとも全員が拳を包んだ。一度だけ振り返った彼女の瞳には、悲哀が悔しさが色濃く浮かんでいた。
大勢で囲んだ。
誰も泣いていなかった。
胸に来る激情の炎はあっても、外に放つことすらしなかった。
震える拳を皆が握る。ポタリポタリと大地を紅く染めた。
「満たされた顔しやがって……御大将と鳳統様の晴れ姿を見るまで死なねぇって、言ってたじゃねぇか」
第三の部隊長が零した。空っぽの抜け殻のような声が宙に溶ける。
誰よりも最精鋭の奴等や副長に近付きたいと渇望していたこいつは、口惜しさがより大きいに違いない。
「なぁ副長……お前しか、御大将の右腕には……なれねぇんだぞ」
全ての始まりより戦い続けてきた絶対の右腕。御大将の次に俺達と信頼を結び続けてきた男。代わりなど、誰にも出来るはずがない。
「なぁ副長っ……お前がいなけりゃ、誰が御大将のバカ野郎を止めるんだよっ」
間違った時は止めてくれといつでも言ってきたあの人を止めるには、俺達の指標は必要不可欠だった。
「バカやろう……っ……バカ、やろぅ……くっ……ああっ、あああああああああっ!」
荒げた声に反して、副長の襟元を掴む手は弱々しく。
膝をついて泣き始めた第三のバカと同じように……俺の脚からも力が抜けた。
胸に……穴が空いちまった。
ぽっかりと、大きな大きな穴が。
じわり、瞼に籠る熱が増していく。頬にナニカが伝った。
ぎゅうと胸が締め付けられる。痛い、痛いのだ。
苦しかった。今までで一番、苦しかった。
ぼやける視界でどうにか見つめ続ける。顔はやっぱり満たされたまんま
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