黒と繋ぎし想い華
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「アレが俺の目指す先で、命を捧げるに足りる唯一の“御大将”……黒麒麟だ」
練兵場で舞い踊る黒。
明らかに異質な武力を持つ女を相手に一歩も引くことなく。ギリギリのやり取りは自分達では命を落とすこと相違ない格上の居場所。
思わず見惚れた。目を奪われるとはまさにこのこと。沸々と粟立つ肌と、じわじわと胸に湧く熱いナニカ。
無意識の内にぎゅうと拳が握られていた。それは悔しさだったのかもしれないし、羨望だったのかもしれない。
「お前は守られてるだけで満足か? 死ぬことにびびって、格上相手に腰を抜かして、女に守られるような男で満足か?
あの方みたいに、極上の女を己の鍛え上げた腕で守りたいって思わねぇのかよ?」
胸に湧いた感情の理由は言われて分かった。
女の影に隠れるなんて嫌だった。
女の背中に守られるなんてまっぴらだった。
男として生まれたなら……綺麗な女に背中を見せずして、なんの為に生まれてきたってんだ。
肩に大きな手を置いて、男くさい笑みを向けてきたあいつは……あの時、嬉しそうにこう言ったんだ。
「はっ……意地っ張りの掃き溜めにようこそ。
俺はいつか黒麒麟の右腕と呼ばれる男……“周倉”ってんだ。仲良くしようぜ、大バカ野郎」
†
鈍重な大型武器との戦いは猪々子との戦いで慣れていた。
一合目は見極めに全てを使い、全力の速さを以って、対面する魏延の武器による殴打を掻い潜った。
遅れて鳴るは轟音と言うに相応しい音。駆け抜けた先、振り返ってみてみれば大地が大きく抉れている。
――やっぱこいつら、バケモンだわ。
一撃でも喰らえば終わり。当たり前だとは思っていたがいざ目の前にすると、でたらめなバカ力に寒気が走る。
男では絶対に出せない力。女武将になるモノは大概がこうして異質な力なり速さなりを持っている。生まれからして差があるのだろう。
しかし……羨ましい、とは思わない。
こんなデタラメな力が無くとも、自分達は戦えると知っているから。
こんなデタラメな力を越える為に、いつだって頭を回し、鍛えてきたから。
感じるモノは羨望とは全くの逆。
化け物と評するべき武人達を、己たちが倒せる事に対する歓喜があるのみ。
――御大将は俺らと戦うことで教えてくれてたんだ。こいつらと、非力な俺らでも戦う方法を。
ただ一人の異端と長く戦ってきた者達は、いつだって地獄のような訓練で対処法を練り上げ、彼が戦ったことのある武人達のタイプへの応対すら積み上げてきたのだ。
例え相手にするのが自分一人であろうと、彼が命じるのならこいつらを足止めしなければならない。
例え敵が人中の呂布と謳われる飛将軍であろうと、彼が抑えろとい
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