黒と繋ぎし想い華
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「おっ、新入りか?」
アレは黄巾が大陸に跋扈していた時のこと。
曹操軍と共に行動していた劉備義勇軍の拠点を訪れて、練兵場に案内されて真っ先に出会ったのはいかつい見た目の大男だった。
俺は義勇軍というよりも賊の方が似合ってそうなその男の風貌にビビっちまってた。
「はい! 劉備義勇軍は向かう所敵無しと聞いてます! 微力ながら自分の力を大陸の平穏の為に役立てたく思い、門戸を叩いた次第です!」
緊張しながらもちゃんと言えたと思う。
正直、有名になっていく義勇軍に早い内から所属すればきっとこんな自分だって優遇される……なんて下心もあった。
片田舎で暮らしてるだけじゃ可愛い嫁さんを貰うことも出来ない。美味いメシにありつくことも、たらふく酒を飲むことも出来ない。
兵士ってのは戦えば金が貰える。義勇軍はあんまり儲からないらしいけど、こんだけ名前が売れてるのならそのうち何処かで領主とかになるんだと思ってた。だからそれにあやかろうと思ったんだ。
「そうか。んじゃあ聞くが……お前、誰の下に付きたい?」
最初の質問の意図は理解出来る。
劉備義勇軍には三人の武将が居たから、その中から選べってことだろう。
軍神と名高い関雲長、燕人と呼び声のある張翼徳、黒麒麟と謳われる徐公明。
じ……と見つめる視線は真剣そのもので、それでも視線だけは外さずに考え込み……俺は質問を投げ返した。
「あなたは、誰の……?」
目の前の大男は誰の下に付いているのか、せめてもの情報収集くらいはしようと。
僅かに眉を顰めたそいつは一寸の後、ニッと男らしい笑みを浮かべた。
「俺はな、“最強の男”と一緒に戦ってる」
それだけ聞けば誰の下で戦っているのかは分かった。
武将は誰しも女ばかりのはずなのに、たった一人だけの異端。あの時分、劉備軍で一番に名前が売れてたのはその男で間違いない。
「男ならぁ、誰かの為に強くなれ。誰にも負けないように強く在れ……ってな。
お前が誰の下につこうと思ってるかは知らねぇが、あの方みたいに強くなりたいなら俺らんとこが一番だぜ?
血反吐撒き散らしてでも男の意地を張りたいって奴等ばっかりだ」
「厳しいので?」
「ははっ、そりゃな! 死にたくないなら強くなるっきゃねぇし、簡単に戦えると思ってたら大間違いだ」
楽しそうに笑いながらその男は頭を掻いた。
よく見れば腕は傷だらけ。小さい傷も大きい傷も、古傷を上塗りするように幾重もの傷で埋め尽くされていた。
ゴクリと生唾を呑み込む。どんな厳しい訓練をしているのかとちょっとびびっちまった。
「何より……見ろ」
見下しとは全く違う、試すような視線。不敵な笑みが印象的に過ぎた。
クイと親指で差された先には……。
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