第二十一話:夕飯前の出来事
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なのか……?
「ちょっと! 兄ちゃん聞いてる!?」
「聞いてない」
お前の無駄話よりも、よほど身になる事を考えていたもんでな。
大体人様の身体の詳細なんて、事細かに聞きたい物じゃあない―――元より詳細を聞いて、だから俺にどうしろと言うんだ。
「なによー……折角兄ちゃんの今夜のオカズの為にと、妹が類稀なる表現力で言い表そうとしているのにぃっ」
「何言ってやがる、今夜俺は白米も何も食わねぇよ」
「あら兄ちゃん知らないの? オカズっていうのはスラングで」
手元に置いてあったまな板を持ち上げ、愚妹目掛けてぶん投げれば、その楓子の額へ見事クリーンヒット。
無言のまま白目をむいて、ゆっくり仰向けに倒れていった。
……ざまぁみろ。
「兄ちゃんは枯れてますっ!」
チッ、すぐに起き上がってきやがった。
「もっと兄ちゃんは女体へ興味を持つべき! だから今度一緒に三人でお風呂に浸かる―――」
「真っ赤な液体に浸からせるぞ」
眼へ力を込めギロリと睨んでやれば、楓子は目にも止まらぬスピードで逃げて行った。
漸く騒ぎの根源が居なくなったことに安堵のため息を吐いて、開けっ放しになっていた袋を再度持ち上げ白米へかける。
「……麟斗……とても良いお湯だった」
「デコ助にセクハラされたのに、まさかそんな台詞が飛び出すとはな」
背後から掛けられた抑揚の足りないマリス声に、作業中な為に背を向けたまま俺は答える。
只、湯加減の感想だけだったなら俺も何も言わず流して居ただろう。
が、“良かった”などという予想外の言葉が飛び出した所為で、考えていた事をそのまま口に出してしまった。
俺は差し詰め、大なり小なり不愉快に思っていると、そう予想していたからだ。
なのに彼女の口から出てきた言葉は、不快さを表わす単語でもなければ、疲れを見せる語調でもなく、恐らく半分以上が風呂をもらった際に例として述べる言葉。
多少驚いても仕方ないと思う。
まあ、これ以上驚く事は無いだろうな。
「……楽しかった」
……思っていたんだがな。
マリスの口から更に飛び出した思いもよらぬ一言に、作業の手が数秒止まる。
そこから次の言葉を脳裏にて紡ぎだすのに、またたっぷり数秒かかってしまった。
……今なんて言った、コイツ? 楽しかった?
コイツもコイツで楓子同様に同性愛者の傾向があるのか?
モヤモヤを抱きながら、俺は目線を後ろへずらした。
「何故にそんな言葉が飛び出すか知らねえが―――――って、待てコラ」
呆れ一色な心持で振り向いた俺は―――――用意していた次の言葉を紡ぐ事なく、短い突っ込み
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