巻ノ二十二 徳川家康という男その十二
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「武田家、そしてな」
「真田家はその赤備えを受け継いていますな」
「風林火山の旗は受け継いていませんが」
「赤備えはそのままです」
「受け継いでいますな」
「そうじゃ、その赤備えを敵に回すことはな」
やはり強張った顔で言う男だった。
「ならん」
「ですが」
一人の若い男が言って来た。
「赤備えはそれがしも」
「わしが命じたがな」
「はい、赤備えのその強さを」
「御主にも備えてもらいたくてじゃ」
それ故にというのだ。
「そうさせておる」
「ですな」
「あの強さは当家も入れたい、それだけにじゃ」
「真田家はですな」
「あの御仁達も含めて敵に回したくない」
「そういうことですな」
「その通りじゃ、何とかして真田は戦を経ずして当家に入れよ」
このことは絶対と言うのだった。
「わかったな」
「畏まりました」
「その様にしていきます」
周りの者達も男に応えた、そうした話をしてだった。
男は周りの者達を連れてその場を後にした、そして。
駿府城においてだ、家康は家臣達にこう命じていた。
「甲斐、信濃は順調に攻めておるな」
「はい、戦は殆どせず」
「どの国人も我等の話を聞いて従っております」
「順調に進んでいます」
「足場は固まっております」
「ならよい、しかしじゃ」
ここでだ、家康はこうも言った。
「北条、上杉には気をつけよ」
「両家共信濃を狙っていますしな」
「北条は甲斐もです」
「両家共我等と戦をしてでもとです」
「信濃、甲斐に入っていますな」
「そうじゃ、特に北条が厄介じゃ」
上杉家よりもこの家だというのだ。
「何とか話で甲斐と信濃を譲ってもらいたいな」
「はい、北条家はです」
ここで言って来たのは石川数正だった、徳川家において四天王筆頭である酒井と肩を並べる重臣であり政を得意としている。
「甲斐、信濃も確かに狙っていますが」
「も、じゃな」
「第一は関東です」
そちらを狙っているというのだ。
「その目は東を向いています」
「だからじゃな」
「確かに甲斐、信濃を狙っていますが」
「それよりもじゃな」
「関東の国を狙いその覇者となりたいので」
「我等fが関東に攻め込まぬと言えばな」
「話が出来ます」
北条家はそうだというのだ。
「甲斐、信濃を譲ってもらえます」
「そうした話が出来るな」
「正直北条と揉めるべきではありませぬ」
石川は主に確かな声で言った。
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