第一部
第二章 〜幽州戦記〜
五 〜極限の戦い〜
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っ!」
「あぐっ!」
今度は、味方が討ち取られていく。
……短い間とはいえ、苦楽を共にしてきた仲間。
それを喪うというのは、何度経験しても、嫌なものだ。
「まだ、合図は出さないのですか?」
焦れたような、兵の声。
「まだだ。星の隊が布陣する場所まで、奴等を引き付けねばならぬ」
「し、しかし。このままでは、味方が全滅してしまいます!」
「落ち着け! そんな事はさせぬ!」
私とて、余力があればこのような、犠牲の多い戦術は採りたくない。
……しかし、百倍もの敵が相手。
しかもじっくり構える余裕がない我が軍には、選択の余地などない。
「稟、風」
「はい」
「何でしょうー」
「……このような戦、重ねては行わぬ。よいな?」
「……歳三様が、そうお望みとあらば。知恵を絞りましょう」
「お兄さんが、冷酷でない事は、風もわかっていますから。稟ちゃんと一緒に頑張りますよー」
「……頼む」
私は、顔を上げて敵陣を睨み付けた。
……頃合いだな。
「星に伝令を」
「ははっ!」
「かかれーっ!」
掛け声と共に、一斉に矢が放たれる。
勢いに乗って追ってきた賊は、いきなりの事に慌てふためいている。
「怯むな! 敵は小勢だ、押し潰せ!」
よく通る声だ。
あれが程遠志かも知れぬな。
……とは言え、日も暮れ、夜の帳が辺りを包み込んでいる。
敵味方の識別だけはつくようにしておいたが、流石に離れていては人相までは掴めぬ。
「お兄さん、そろそろかとー」
「そうだな。よし、旗を立てろ! 銅鑼と鐘を鳴らせ!」
合図と共に、辺りが喧噪に包まれた。
「か、官軍だーっ!」
「敵の増援だ! 大部隊だぞ!」
敵に紛れて、味方があちこちで声を出す。
「か、囲まれてるぜ?」
「う、うわーっ!」
「狼狽えるな、てめえら! この程遠志様がついている!」
自ら、居場所を明かしてくれたか。
「程遠志、見参! 土方軍が一の青龍刀、関雲長!」
「ほざけ、下郎がっ!」
程遠志が、得物を一閃。
軽々と、愛紗はそれを受け止めた。
「ほう、力だけはあるようだな!」
「何だと、この女!」
力任せに、愛紗に向けて降り下ろす程遠志。
どうやら、得物は同じ、青龍刀のようだ。
……だが、持ち主の技量に差があり過ぎるらしい。
「どうした? 全く当たらぬが?」
「うるせぇ! これで、どうだっ!」
怒りに任せて、今度は突き。
だが、変わらず、余裕で受け止める愛紗。
「聞くと見るとでは大違いのようだな、程遠志?」
「ぬかせっ!」
「ならば、こちらから行くぞ! はぁぁっ!」
受けてばかりだっ
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