第一部
第二章 〜幽州戦記〜
五 〜極限の戦い〜
[5/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
、敵陣から兵が出てきた。
数は……凡そ三千、というところか。
全軍でも五百の我が軍を相手にするには、些か大袈裟な数だ。
流布した情報を聞き、我らを完全に侮ったが故、だろうな。
「ガーッハッハッハ、おいガキ! お前がこの乞食どもの大将か?」
「鈴々達は、乞食ではないのだ!」
「ああん? 鍬や鋤じゃ、俺達には勝てないぜ? さっさと帰って、おっかさんの乳でも吸ってな!」
「へへーん、鈴々が怖いのか? 所詮、弱い者虐めしか出来ない、見かけ倒しなのだ」
と、男の顔がみるみる強張っていく。
「おい……調子に乗るなよクソガキ。俺様を誰だと思ってる、泣く子も黙る、ケ茂様だぞ?」
「知らないのだ。お前、バカか?」
鈴々にからかわれ、ケ茂は憤怒の表情に。
「言わせておけば、このガキ! そんなに死にたいか!」
「やれるものなら、やってみるのだ」
「テメェ、ぶっ殺す!」
ケ茂は、大斧を振り回しながら、鈴々に襲いかかる。
「死ねぇぇっ!」
「それは、こっちの台詞なのだ。うりゃりゃりゃ!」
鈴々は、構えた蛇矛を、凄まじい速さで繰り出した。
そして、
「グエッ!」
一合も打ち合う事なく、ケ茂は倒れた。
「副将ケ茂、鈴々が討ち取ったのだ!」
「おおおーっ!」
すかさず、味方から歓声が上がる。
一方、いきなり将を失った賊軍。
確かめるまでもなく、完全に浮き足立っている。
「よし、みんな! 鈴々に続けー!」
火の玉の如く、敵に斬り込む鈴々。
「うりゃりゃりゃりゃ!」
「ぐはっ!」
「ぎゃっ!」
数は我が軍の三十倍もいる筈の賊軍だが、戦うどころではないらしい。
鈴々の蛇矛が振るわれる度に、どんどん人数を減らしていく。
「流石は鈴々ですね。ケ茂の部隊は壊滅状態です」
「お兄さん。敵の本陣に動きが出てますよー」
私の双眼鏡を使っている風が、敵陣を覗きながら言った。
「よし、鈴々に合図を送れ」
「はっ!」
控えていた兵が、一条の火矢を、空へ放つ。
銅鑼の音が鳴り響き、地響きがした。
「合図は?」
「……ありました、あれです!」
稟が、双眼鏡で見つけ出したようだ。
かすかに、敵本陣で松明が振られている。
「皆、抜かるな。まだ勝った訳ではない!」
「応っ!」
敵はほぼ全軍、出撃のようだ。
後は、手筈通りに皆が動けば……。
鈴々は、出てきた敵軍に突っ込み、少し戦ってから、
「敵が多すぎるのだ。一旦、引くのだ!」
声を張り上げながら、撤退していく。
「逃すか!」
「ケ茂様の仇だ、皆殺しにしろ!」
殺気立った賊は、当然追撃を始める。
「ぐへ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ