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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
五 〜極限の戦い〜
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、敵陣から兵が出てきた。
 数は……凡そ三千、というところか。
 全軍でも五百の我が軍を相手にするには、些か大袈裟な数だ。
 流布した情報を聞き、我らを完全に侮ったが故、だろうな。

「ガーッハッハッハ、おいガキ! お前がこの乞食どもの大将か?」
「鈴々達は、乞食ではないのだ!」
「ああん? 鍬や鋤じゃ、俺達には勝てないぜ? さっさと帰って、おっかさんの乳でも吸ってな!」
「へへーん、鈴々が怖いのか? 所詮、弱い者虐めしか出来ない、見かけ倒しなのだ」

 と、男の顔がみるみる強張っていく。

「おい……調子に乗るなよクソガキ。俺様を誰だと思ってる、泣く子も黙る、ケ茂様だぞ?」
「知らないのだ。お前、バカか?」

 鈴々にからかわれ、ケ茂は憤怒の表情に。

「言わせておけば、このガキ! そんなに死にたいか!」
「やれるものなら、やってみるのだ」
「テメェ、ぶっ殺す!」

 ケ茂は、大斧を振り回しながら、鈴々に襲いかかる。

「死ねぇぇっ!」
「それは、こっちの台詞なのだ。うりゃりゃりゃ!」

 鈴々は、構えた蛇矛を、凄まじい速さで繰り出した。
 そして、

「グエッ!」

 一合も打ち合う事なく、ケ茂は倒れた。

「副将ケ茂、鈴々が討ち取ったのだ!」
「おおおーっ!」

 すかさず、味方から歓声が上がる。
 一方、いきなり将を失った賊軍。
 確かめるまでもなく、完全に浮き足立っている。

「よし、みんな! 鈴々に続けー!」

 火の玉の如く、敵に斬り込む鈴々。

「うりゃりゃりゃりゃ!」
「ぐはっ!」
「ぎゃっ!」

 数は我が軍の三十倍もいる筈の賊軍だが、戦うどころではないらしい。
 鈴々の蛇矛が振るわれる度に、どんどん人数を減らしていく。

「流石は鈴々ですね。ケ茂の部隊は壊滅状態です」
「お兄さん。敵の本陣に動きが出てますよー」

 私の双眼鏡を使っている風が、敵陣を覗きながら言った。

「よし、鈴々に合図を送れ」
「はっ!」

 控えていた兵が、一条の火矢を、空へ放つ。
 銅鑼の音が鳴り響き、地響きがした。

「合図は?」
「……ありました、あれです!」

 稟が、双眼鏡で見つけ出したようだ。
 かすかに、敵本陣で松明が振られている。

「皆、抜かるな。まだ勝った訳ではない!」
「応っ!」

 敵はほぼ全軍、出撃のようだ。
 後は、手筈通りに皆が動けば……。
 鈴々は、出てきた敵軍に突っ込み、少し戦ってから、

「敵が多すぎるのだ。一旦、引くのだ!」

 声を張り上げながら、撤退していく。

「逃すか!」
「ケ茂様の仇だ、皆殺しにしろ!」

 殺気立った賊は、当然追撃を始める。

「ぐへ
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