第一部
第二章 〜幽州戦記〜
五 〜極限の戦い〜
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翌朝。
朱儁から渡された金を、稟と風に見せた。
重さからすれば少額ではないのであろうが、如何せん私では具体的な価値がわからぬ。
「こ、こんなに戴いたのですか?」
「おおー、大金ですねー」
二人が驚くのを見る限り、朱儁はかなりの額を渡してくれたらしい。
恐らくは、身銭を切ってくれたのであろう。
朝廷の高官であれば、不正を考えるならいくらでも私財が貯め込める時代。
……だが、あの御仁はそうではないようだ。
私がもっと力をつけた暁には、十分に礼を返さねばなるまいな。
「では、折角の資金だ。有効に用いたいが、何か案はあるか?」
かつては、近藤さんから私が言われた台詞。
あの頃は、いろいろと私が取り仕切らざるを得なかった。
近藤さんは大将としての器は十二分に備えていたが、とにかく万事大雑把であり金遣いも荒かった。
だが、今はこうして頼れる知恵袋がいるのだ。
私などが一人で考え込むよりは、全て任せた方がいい。
「私は、やはり兵の増員と、武器の購入に充てるのが良いかと思います」
「糧秣も大事ですねー。朱儁将軍につかないとなると、手持ち分だけでは心細いですし」
ふむ、糧秣か。
先だっての戦いは奇襲が成功した事もあり、負傷者を十数名出しただけで済んだ。
さらに降伏した黄巾党の連中を武装解除の上、解き放ったのだが……。
「どうせ行くあてもありやせん。旦那についていきやす」
「今更他の部隊に合流したって、先は見えているんで。それぐらいなら、いっその事真人間に戻りてぇんです」
……こんな調子で三千余名もの賊兵が、我が軍に加わる事を願ってきた。
無論全員を受け入れる訳にもいかぬので、これから数日をかけて厳しい調練を施すつもりでいる。
その上で人間性を見極め、使える者だけを残す。
ただでさえ低い兵の練度が上がらぬばかりか、要らぬ狼藉に及ぶ者を抱え込みかねない。
いずれにせよ、糧秣が大量に必要である事に変わりはないが。
「風」
「はいー」
「糧秣はあと、どのぐらい保つ? 仮に投降した連中を二千名加えるとして、だが」
「そうですねー。節約しても……残り三日、というところでしょうか」
三日、か。
それでは、選り分けの為の調練ですら追いつかぬ。
「どうなさいますか、歳三様。この資金で手配するとしても、こんな短期間で集めるのは至難の業です」
「それに、あまり慌てて買い集めると足下を見られますしねー」
思わぬところで、難題が発生してしまった。
尤も、人間は食わねば生きてはいけない。
そして我らは、その糧を自力で得る術がない。
となれば、その分はどこからか調達するしかない。
これが賊であれば民から奪い取れば良いが、我ら
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