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真田十勇士
巻ノ二十二 徳川家康という男その五

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「しかしな」
「それでもでしたな」
「都の公卿の方々の政に惑わされ」
「謀にもかかり」
「あの様に」
「特に法皇様にじゃ」
 後白河法皇だ、頼朝をして天下の大天狗と言わしめ平清盛ですら容易に太刀打ち出来る相手ではなく苦しめられた。
「惑わされた」
「そして法皇様に追討の院宣を出され」
「頼朝公に討たれましたな」
「頼朝公の弟であられた義経殿に」
「そうなった、そしてその義経殿もじゃ」
 その彼もというのだ。
「壇ノ浦の後都に戻られたが」
「そこでも法皇様にですな」
「惑わされ」
「そして結果として」
「頼朝公に」
「そもそも源氏は呪われておったのか」
 ここでだ、幸村は嘆きを含めて言った。
「まず身内同士で殺し合った」
「そういえば確かに」
「平家と争うよりもでしたな」
「まず兄弟従兄弟同士で殺し合い」
「頼朝公も」
「そして誰もいなくなった程でした」
 実朝が甥公卿に殺され誰もいなくなった、公卿もまた殺されてだ。
「身内で殺し合う愚を続け」
「後は何も残らなかった」
「それが、ですな」
「源氏の呪いでしたか」
「そうも思う、とかくじゃ」
 さらに話す幸村だった。
「義経公もじゃ」
「都に戻られたが故に」
「その政に惑わされ」
「滅んでしまわれましたか」
「だからな」
 それで、というのだ。
「武家は都に入って政を行うべきではない」
「あそこまあくまで御所ですか」
「公卿の方々の場所ですか」
「天下の心の臓にしましても」
「それでも」
「そう思う、羽柴殿はこのことでも正しい」
 秀吉、彼はというのだ。
「大坂に拠点を置かれ城を築かれたのはな。しかし」
「しかし?」
「しかしといいますと」
「前右府殿も羽柴殿も西国じゃが」
 信長も秀吉もというのだ。
「しかしな、頼朝公は東国におられて天下を治められた」
「そのことが、ですか」
「殿のお考えに入る」
「そうですか」
「うむ、鎌倉幕府は百年少しで滅んだが」
 しかしというのだ。
「東国でも天下は治められるのじゃ」
「ではまた鎌倉にですか」
「誰かが入られれば」
「それで、ですか」
「天下人になられますか」
「若しくは他にそうした場所が東国にあれば」
 それで、というのだ。
「若しやな」
「東国に入られて」
「天下人になると」
「それが出来るとですか」
「そう言われるのですか」
「そうやもな。思えばな」
 それこそとも言った幸村だった。
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