暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
孤独を歌う者 2
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伏せて、首を横に振る。

「私に、彼女は救えません」
「お前以外に、あれは戻せない」
「いいえ。彼女の時間は既に前へと進んでいます。形が変わったとしても、消え去ることはないでしょう」
「何故……どうして、手を離そうとするんだ……っ」
「貴方が切り離したからです」
「だから俺は!」
「解かれたものは、元通りには結び直せない。だから新しく結ぶんですよ」

 言ってる内容はさっぱり解らないが。
 レゾネクトの腕を引き寄せ、頭を抱えて撫でる姿は、小さい子供をあやす大人みたいだ。実年齢で言えば真逆だってのに。

 …………そう。
 これは大人と子供のやり取りにしか見えないんだから。
 いちいち気持ち悪ぃとか言って砂を吐くんじゃねぇよ、ベゼドラ。

「お前が居ないと、手に入らない」
「いいえ。貴方も変われば良いのです。奪う者から、護る者へ」
「お前じゃないと、意味がない……っ」
「いいえ」
「!? それは、アルフの……! やめて、レゾネクト!!」

 レゾネクトの頭上に、紫色の光で形作られた剣が顕れる。
 その形に見覚えでもあるのか、幼女が短い悲鳴を上げる。
 鋭く尖った先端が狙い定めてるのは、クロスツェルの頭。

「お前に会わせないと、マリアは笑わないんだよ!
 ()()()()()()!!」

 レゾネクトの叫びに合わせて疾る剣。
 それは、見上げたクロスツェルの目の前に迫り。
 空気の玉が弾け飛ぶように破裂して、消えた。

「いいえ。貴方が彼女を、彼女が愛するものを深く傷付けてしまったから、貴方には見えないのです。彼女の願いを、望みを映しなさい、レゾネクト。そうすれば、貴方が本当に為すべきことを理解できます」
「マリアは、お前以外と向き合わない!」
「いいえ。彼女が今大切にしているのは、娘であるロザリアとアリアです。アルフリードは彼女の遠い過去でしかない。生物は常に未来へと進むもの。それを忘れてはいけません」
「お前が居ないと、マリアは生きられない!!」
「……レゾネクト……?」

 母親が、どういうことかと言いたげな顔で、階段の下まで歩いてきた。
 幼女のほうも、訝しげに眉を寄せて、言葉を失ってる。

 ……えー、っと。
 要するにこれって、あれか?
 レゾネクトは、母親に笑って欲しかった、だけ?
 母親の昔の恋人を生き返らせれば母親が笑うって。
 そう信じてたのか?

 じゃあ、レゾネクトの本当の目的は。
 レゾネクトが本当に映してたのは。

 アルフリードってやつじゃなくて……母親?



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