暁 〜小説投稿サイト〜
逆さの砂時計
孤独を歌う者 2
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話

 驚いて振り向いた先で、幼女が頭を抱えて膝を落とした。
 泣いてる? のか?
 間近に居なくても分かるくらい、全身でガタガタと震えてる。
 その周りを、金色の何かが心配そうに翔ぶ。

「そうやって……そうやって、また、殺すの? フィレス様を突き殺して、止めようとするベゼドラやクロスツェルの体を切り裂くの……? アルフを殺したように私を殺して、今度はアリアをこの空間に閉じ込めるの……!? 私から! どれだけ奪い続ければ気が済むのよ! 貴方は──っ!!」

 薄い水色の光が幼女から放たれる。
 弱々しい、頼りない、涙色の光だ。

 なんだろう……この光、ずっと昔から知ってる気がするな。
 すごく……悲しい……

「教えてくれないか。ロザリア、クロスツェル」

 レゾネクトに向き直れば、私とクロスツェルをじっと見てる。
 ただ解らないことを訊いてるだけ、みたいな、本当に不思議そうな目で。

 どうしたもんかと、クロスツェルに顔を向けて様子を窺ってみたら。
 レゾネクトを見返す金色の目が、やんわりとした曲線を引いた。

「生きたいからですよ」

 レゾネクトに向けて差し出してる左手は、そのままに。
 クロスツェルが答える。

「何の為に?」
「やめて! 答えないで、クロスツェル!!」

 幼女の涙声を背に受けて、それでも表情一つ変えることなく。

「生きたいからです」

 また、同じ言葉を重ねる。

「……それは、生きたいから生きている、という意味か?」
「はい。それ以外に、どんな理由が必要でしょうか?」

 私が知ってるクロスツェルなら、アリア信仰を世界に広めて迷い苦しむ人々を救う為、とか答えそうなものだけど。
 変わったなあ、コイツ。

「生きることに、何の意味がある?」
「意味なんてありませんよ。そんなもの後付けすればいくらでも作れるし、貼り替えが利く言い訳でしかない」
「では何故、生きたいと願う?」
「死にたくないからです」

 うん。
 変わったな。本当に。

「俺も、そうなのか?」
「どうでしょうか? 私と貴方が同じかどうかは、何とも言えませんが……とりあえず貴方には、自分の力だけでは何をどうやっても得られなかった、どうしても欲しいものがあるんですよね?」
「!」

 なんだ? また、レゾネクトの表情が変わった。
 驚きと怒りが混じる瞳で、クロスツェルを睨む。

「何故、そう思う?」
「状況からの推測です」
「不愉快だな」
「すみません」

 爽やかな笑顔が嘘臭い。

「ですが、それを得たいのならまわりくどい行動なんて必要ありませんよ。むしろ素直さが重要だと思います」
「おい、クロスツェル。あんまり挑発すんなよ。険悪にしてどう
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ